【5月9日 AFP】インド東部・西ベンガル(West Bengal)州で8日、コミュニティー間の対立をあおるプロパガンダだとして物議を醸している映画の上映が禁止された。

 上映禁止とされたのは、ヒンズー教徒以外も多く住む南部ケララ(Kerala)州が舞台のヒンディー語映画『Kerala Story(原題)』。ヒンズー教徒やキリスト教徒の女性約3万2000人がイスラム教に改宗し、うち一部がイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に入るという内容だ。

 批評家らは、宗教間の対立と不安をあおるためにうそを広めていると非難している。

 一方、同作品はナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相のお墨付きで、ヒンズー教の強硬派からは描写が正確だと支持されている。

 国内有数の人口を擁する西ベンガル州のマムタ・バナジー(Mamata Banerjee)州首相は、「ゆがめられた物語」だと非難した。同州コルカタ(旧カルカッタ)で同日行われた記者会見で上映禁止について「ヘイトと暴力を避けるため、州の平和を維持するためだ」と説明した。

 映画の予告編は当初、数千人の女性が「砂漠に埋葬されるため」に故郷を離れたとうたっていた。しかし、映画をめぐり論争が高まるにつれ、ケララ州出身の女性3人の物語と修正された。

 だが、エンドロールには「改宗後、家に戻ることのなかったケララ州とカルナタカ(Karnataka)州マンガルール(Mangalore)出身の女性数千人にささげる」と依然として書かれている。

 アヌラグ・タクル(Anurag Thakur)情報・放送相は、テレビ番組「インディア・トゥデー(India Today)」に出演し、同作品はISの現実だと発言。この映画の上映を禁止した西ベンガル州は「女性を恋愛感情で誘う」テロ組織に事実上味方をしていると非難した。

 タクル氏は「こうしたテロ組織のやり口を理解するために、すべての人がこの映画を見るべきだ。インドの一部地域を含め、世界中で勧誘活動をしている」と述べた。

 インド当局はこれまで、市民数千人がISに加わった可能性があると懸念を示したことはない。

 南部タミルナド(Tamil Nadu)州でも、同作品をめぐり暴動が起こる恐れがあるとして、複数の映画館が上映を中止している。(c)AFP