【5月9日 東方新報】中国でも4月末から5月にかけて大型連休のゴールデンウイークを迎えた。今年の連休は5月1日の労働節(メーデー)を挟んで4月29日から5月3日までの5日間。人びとの行動を厳しく制限したゼロコロナ政策を緩和してから初めてのゴールデンウイークとなった。

 中国の文化観光省によればこの間、国内旅行に出かけた人は延べ2億7400万人。去年の同時期に比べ約1.7倍、コロナ流行前の2019年の同時期の約1.2倍になった。移動距離や消費行動で言えば、過去最高を記録したという。休みの日数は春節(旧正月、Lunar New Year)に比べると短いが、この時期は気候が格段に良く観光にはもってこい。海外旅行に関してはまだ元通りとはいかないものの、国内に関していえば「リベンジ旅行」によって、コロナ禍で落ち込んだ旅行需要がほぼ回復したと言えそうだ。

 同省によれば、旅行先の一番人気は首都・北京。摩天楼に彩られる大都市ながら、市内や周辺には名所旧跡が多いのも魅力だ。他にも風光明媚(めいび)な浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)、少数民族の風俗などにも触れられる異国情緒あふれる雲南省(Yunnan)大理市(Dali)などが旅行先の定番という。

 北京を目指す人の必見といえば万里の長城。中でも高く険しい山の尾根に築かれた八達嶺(Badaling)の万里の長城(Great Wall of China)は、北京中心部からもアクセスしやすいので旅行者に人気が高い。その姿は多くの人が抱く長城のイメージに合致して壮大で美しい上に、四季によって変化する。このゴールデンウイークに更に新たな姿が加わった。

 八達嶺では、ライトアップした夜の長城の参観を可能にしたのだ。夜間の開放は春節にも行った試みだが、その後は土日や祝日のみだった。このゴールデンウイークを皮切りに、今後は毎日、夜の長城を開放し、文化イベントも適宜開催していくという。その効果があってかこの連休中の八達嶺への訪問客は27万3000人。コロナ流行前の同時期に比べ1.2倍近くに増えたという。

 万里の長城は、未開放の部分が多いものの保護と利用の両立を目指してきた。北京では2000年以降、平均で毎年1000万元(約1億9542万円)近くを投入し、100近い保護修復プロジェクトを展開してきた。

 そうした結果の上に成り立つ今回の八達嶺の試みは、脆弱(ぜいじゃく)性が指摘される北京の夜間の経済活動への波及効果も期待される。また、習近平(Xi Jinping)国家主席が「長城の文化的価値の発掘や文化遺産の伝承や保護をしっかりと行い、民族精神を発揚しなければならない」と強調しているように、中華民族のアイデンティティーを象徴する歴史遺産となっている。(c)東方新報/AFPBB News