三星堆、文化のデジタル化に今後とも注力
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【5⽉12⽇ Peopleʼs Daily】中国・四川省(Sichuan)広漢市(Guanghan)にある三星堆(Sanxingdui)遺跡は、20世紀における人類の最も偉大な考古学的発見の一つとされる。この遺跡で考古学調査が実施されて新たな発見が行われるたびに、社会全体を巻き込む考古学ブームが出現する。出土品などを展示する三星堆博物館は発見のあるたびに、一躍四川省で最も人気のある博物館になり、大勢の人が詰めかけてSNSに画像や映像を投稿する。
三星堆遺跡関連では今年初め、3号坑から出土した「頂尊跪座人像」と8号坑から出土した青銅製の「神獣」の3次元スキャン技術による接合に成功した。3000年以上も別れ別れになっていた遺物が再会を果たしたことになる。人と大型礼器を組み合わせたこの青銅製の大型芸術品の出現は、全世界においても初の部類に属する。
この「接合作業」は、デジタル3次元モデル技術を駆使したことで成功に導かれた。中国の文化財保護や研究技術手段における一つの革新であり、三星堆文化のデジタル化を推し進める典型的な例証にもなった。
三星堆博物館の朱亜蓉(Zhu Yarong)副館長は、「私どもは考古学の発掘段階からデジタル技術を応用しています。考古学調査では科学技術が埋蔵場所の探査を支援できます。そしてデジタル技術と創意工夫をこらすことにより、保護により文化財の利用を活性化できます」「三星堆遺跡の考古学発掘における学際的な重なり合いと融合における科学技術の多さは、未来の考古学発展の新たなモデルを代表しています。次世代型デジタル科学技術と考古学研究の融合を、さらに重点的に進める方針です」と述べた。
自分の目の前で、古蜀と呼ばれる当時の国の民が神木を囲んで祈り、三本足の黄金の烏が空を飛ぶ。耳元では、「バーチャル解説員」が文化財の「過去と現在」を語る――。三星堆博物館をこのほど訪れた陝西省(Shaanxi)西安市(Xi'an)からの観光客の陳(Chen)さんは、MR(複合現実)のゴーグルをつけて、博物館初の複合現実案内映像である「古蜀幻地」を体験した。このような全く新しい文化財の見学と体験方法によって、観光客は「文化財を見ながら、映像を見ながら」にして、三星堆の千年単位の壮大な文化を実感することができる。
三星堆博物館景勝地・遺跡管理部職員の張淞(Zhang Song)氏によると、中国ではすでに、博物館がAR(拡張現実)やMR技術を博物館の文化財復元に活用し、それを3次元的に立体表現することは珍しくない。張氏は「三星堆博物館の革新は、バーチャルな情景を現実のシーンに溶け込ませることでした。見学客に三次元・立体の形で三星堆の文化財を理解していただくだけでなく、虚実が結合した世界に入り、案内映画がもたらす幻想的な感覚に浸りきって体験できるようにしたのです」と説明した。張氏は、「発掘して保護するだけでなく、文化財の価値をハイテク技術を利用して発信することがより重要」と考えている。
三星堆博物館は2016年から3期にわたり文化財デジタル保護プロジェクトを実施した。このプロジェクトでは、大部分の文化財の高精度情報を記録して、三星堆文化財デジタル資源管理システムを構築した。これらのデジタル化の成果は陳列や展示、文化財保護、案内サービス、文化の紹介、文化・創造開発など多くの分野で広く活用されている。
張氏はさらに、「三星堆の文化財は発掘から整理、修復まで、デジタル化により全過程を記録できます。それぞれの文化財に、個別のQRコードによる『身分証』を作成しました。一つの固有コードでライフサイクル全体を記録し、未来における文化財の利用と文化的、創造的な開発に向けての基礎データを構築しました」と説明した。また、破片として存在する文化財を3Dスキャンしてデータベースを構築すれば、人工知能(AI)が器物の色、模様、断面の形態などの情報に基づきつなぎ合わせの可能性を計算し、作業効率を大幅に高めることができるという。
豊富な文化財資源を「活用する」には、文化のデジタル化が重要な道筋だ。今年初めに発表された「四川省国家文化デジタル化推進戦略実施案」は、関連情報の中華文化データバンクへの記入や文化デジタル化インフラの建設、文化データサービスプラットフォームの構築など7分野に言及して、文化資源の全面的な調査成果の統一的な利用、全省一体化型のデータ体系の構築、文化データ相互作用プラットフォームの構築など22項目の重点作業を明確にした。
専門家によると、三星堆文化のデジタル化の模索は、四川省の文化デジタル化の発展の勢いを感じさせるだけでなく、文化と科学技術を融合させた新業態を文化産業における付加価値創出の中核に据えた。現在は仮想現実技術、デジタルアニメーション、オンラインの文化娯楽観光サービス、文化データ資源処理・保存サービスなど多くの分野の融合とせめぎ合いが発生しており、それに伴って、今後は三星堆を代表とする四川省のデジタル文化産業の市場の成長が維持されるとみられている。(c)Peopleʼs Daily /AFPBB News