中国で遺言を残す10~30代 「ゲームのアカウント」も相続
このニュースをシェア
【4月27日 東方新報】中国で遺言書を作成する年齢が若年化しつつある。
市民の遺言を預かる公益団体「中華遺言バンク」によると、25万件の遺言書をビッグデータで分析した結果、遺言を残す人の平均年齢は10年前の77.4歳から68.1歳に低下。2022年末の時点では30代が29.7%を占めている。10代や20代も増え、最も若い人は17歳という。中国では主たる収入を自分で稼いでいる場合、16歳から民法上の権利が与えられる。
遺言の内容は銀行の預金や株、不動産が一般的だが、若者層になると暗号資産(仮想通貨)やデジタルマネー、SNSのアカウント、ゲームアカウントといった「デジタル遺産」の内容が増えているという。
中国では「支払いはすべてスマホ」というキャッシュレス社会が浸透し、財布を持たない人が多くなっている。突然の不幸で亡くなった場合、相続人は暗号資産の存在やスマホのパスワードを知らなければ、財産を受け継ぐことが難しい。
18歳の女性、何平(He Ping)さん(仮名)は今年3月、「大人になった記念」として遺言書を中華遺言バンクに託した。「自分に不幸があった場合、財産を公益団体に寄付する」とし、その内容は「長年ためたお年玉の貯金と、ゲームのアカウント」だった。
20代前半の消防士、涂磊(Tu Lei)さん(仮名)も最近、遺言書を作成した。仕事柄、「いつ命を落とすか分からない」と考えたためだ。それほどの財産はないが、最も大切にしているのが、多額の課金と5年の歳月をかけたゲームのアカウント。遺言書には「アカウントを弟に譲る」と書いた。
中国政府は「デジタル人民元」の導入を進めるなど、社会・経済のデジタル化を推進している。バーチャル空間にだけ存在するデジタルアートなどのNFT(非代替性トークン)やメタバースといった新しいデジタル資産も次々と登場している。一方でデジタル遺産に関する明確な法律の定義はないため、遺言を書く中年・青年層が増えているとみられる。
中華遺言バンク管理委員会の陳凱(Chen Kai)主任は「遺言書を託す若者層は年々増えており、今後も割合が高まっていくだろう」と話している。(c)東方新報/AFPBB News