【4月30日 AFP】女子テニスのモニカ・セレシュ(Monica Seles)が、ドイツ・ハンブルク(Hamburg)で開催された大会の試合中に背中を刃物で刺された事件から、30日で30年がたつ。事件は当時19歳だったセレシュの人生を変え、スポーツ大会の警備態勢を見直すきっかけにもなった。

 チェンジコート中のセレシュを刺した無職の男は、ドイツの強豪選手シュティフィ・グラフ(Steffi Graf)の熱狂的ファンで、セレシュがグラフから世界ランキング1位の座を奪取したことに腹を立てたのが犯行の動機だった。

 セレシュは2年後の1995年にツアー復帰を果たし、翌年には通算4度目の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament)制覇を達成した。しかし、襲撃事件前に見せていた本来の力を取り戻すことはできず、2008年2月に現役を引退した。

 事件から20年が経過した2013年、セレシュは自叙伝で「あのことから距離を置くというのは無理な話。あれで自分のキャリアは一変し、魂も取り返しのつかないほどのダメージを受けた」と明かし、「あの一瞬で、自分は別人になった」と語っている。

 セレシュは1990年に史上最年少の16歳で全仏オープン(French Open)女王となり、91、92年には世界ランキングで年間1位を記録。事件前は飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、その後グランドスラムでタイトルを獲得したのは一度だけだった。

 セレシュを刺した男は、パーソナリティー障害があったと判断され、殺人未遂ではなく暴行未遂の罪で執行猶予判決を受けた。男はその後の人生を施設の一人部屋で過ごし、昨年8月に亡くなっていたことが今月に入って明らかになった。(c)AFP