【4月18日 東方新報】人口14億人を擁する中国では自閉症の人が1000万人を超え、そのうち子どもは200万人以上に達している。そして都市と農村によって、教育を受けられる事情は大きく異なっている。

 北京大学(Peking University)医学部付属幼稚園は2007年から、健常児と自閉症の子どもを同等に受け入れるインクルーシブ教育に取り組んでいる。賈美香(Jia Meixiang)医師は「自閉症の子どもは早期に症状を見つけて適切に対応すれば、言語やコミュニケーションのスキルを改善することができます」と説明する。

 この幼稚園では500人近い園児のうち70人が自閉症の子どもだ。プログラムに基づき時間をかけて、自閉症の子どもたちが園の生活に慣れるようにする。一方で他の園児には、自閉症の子どもたちが理解しづらい言動をしても戸惑わないよう、時間をかけて対応する。幼稚園では2007年以降、845人の自閉症の子どもを受け入れ、そのうち80人が小学校の普通学級に通っている。

 ただ、こうした先進的な教育はごく一部に限られる。

 山東省(Shandong)徳州市(Dezhou)の特別教育訓練校では、457人の自閉症の子どもたちを預かり、1歳7か月の幼児もいる。ずっと動き続ける男の子にはおもちゃを渡したり、絵を描かせたりして落ち着かせる。いつも何かのにおいをかいでいる女の子など、特徴は1人1人で異なる。李国俊(Li Guojun)校長は「多くの教育機関ではまだインクルーシブ教育を実施していません。自閉症の子どもは特別教育を受けられるだけで恵まれているのが実情。農村では学ぶ機会を得ることも困難です」と打ち明ける。

 農村では親から見捨てられて祖父母に預けられたり、自宅にずっと閉じ込められるように暮らしている自閉症の子どももいる。李さんはそんな子どものため、他の教師とともに農村に出向いて勉強を教えている。徳州市内のある農村で、3人の子どもが教科書を持って「我上学了(私は学校で勉強します)」と一斉に読み上げた時、李さんの目から思わず涙がこぼれたという。

 中国では、障害のある子どもたちが教育を受ける権利は、障害者教育条例に明記されている。公立学校に通って専門教員のもと教育を受けるか、あるいは特別学級で学ぶことができる。2018年の統計では、中国には61校の大学に特別教育の専攻があり、1万人以上の学生が学んでいる。しかし全国の障害児らに教育を提供できていないのが現実だ。

 中国人民大学(Renmin University of China)社会保障研修センターの楊立雄(Yang Lixiong)副主任は「中国では障害者の70%が農村に住んでいる。都市部のような財源やサービスが整っておらず、必要な教育・福祉を受けられていない」と指摘。一刻も早い教育体制の整備を求めている。(c)東方新報/AFPBB News