【4月17日 People’s Daily】中国浙江省(Zhejiang)麗水市(Lishui)蓮都区(liandu)傘崗村の砂利道をしばらく歩くと、高さ18メートルの大きな温室ハウスが見えてきた。鉄筋を蜂の巣構造に組み込んだ温室で、果物や野菜がつり下げられた形で栽培されている。

「これはサツマイモです。50センチ近くありますね」。麗水市農業科学研究所で施設農業技術を担当している徐偉忠(Xu Weizhong)さんがハウスを歩きながら、サツマイモを手にする。近くの桃の木は指2本ほどの太さしかないが、徐さんは「あと1年もすれば、こぶしほどの大きさの桃が育ちますよ」と話す。

 植物の根にはセンサーが接続されており、表面の水膜が枯れるとコンピューターが作動し、養液を含んだ霧を自動的に噴射する。野菜や果物によって栄養溶液は異なり、噴霧した水滴は配水管を通して別々に集められ、滅菌した上でリサイクルされている。

「これが噴霧栽培技術です。植物は空中で成長し、殺虫剤を使用せず、土壌も使用せず、インテリジェントな管理を行っています」。噴霧栽培技術は国内外の多くの専門家に認められており、農家の収入増に役立っている。

 新技術の噴霧栽培は1億4000万元(約27億円)の価値があると推定されている。近年は砂漠や海、極寒の山岳地帯などで利用され、過酷な環境でも新鮮な果物や野菜を食べられるようになった。海外ではサハラ砂漠やロシアの高山地帯などでも活用されている。

 噴霧栽培、温室ハウス、コンピューター制御を統合する技術を確立した徐さんは2009年、国家科学技術進歩賞2等賞を獲得した。徐さんは1990年に麗水市農業学校の果樹専攻を卒業した後、借金をしてまで不毛の丘に植樹を行った。温度や湿度、光をコントロールすることで、植物を早く繁殖させられないかと試行錯誤を繰り返し、2001年に短期繁殖技術の開発に成功。1ムー(15分の1ヘクタール)の土地に1000本以上の桃の木を植えて多くの収穫を上げた。徐さんはその収益をもとに独自の研究チームを結成し、さらに研究を続けた。

 徐さんの研究は、実際に栽培すること、そして農家のニーズを満たすことにこだわり続けた。そして多くの研究機関や企業の誘いを断り、故郷にとどまった。 噴霧栽培技術に加えて独自構造の温室、インテリジェント栽培技術を発明し、中国で最初の温室制御コンピューターを開発した。

 徐さんは毎年、研修生を受け入れて噴霧栽培技術を無料で教えており、これまでに1万人以上が学んでいる。広東省(Guangdong)から研修に来た陳彬燁(Chen Binye)さんは「以前は5ムーの土地しか管理できませんでしたが、今では100ムーの土地を管理し、収穫量も3倍以上に増えました。この技術のおかげです」と感謝する。

 徐さんの技術は3000以上の企業・研究機関と20万人以上の農家に浸透している。最近はショート動画SNS「抖音(Douyin)」にも登録し、農業教育の生放送を行っている。徐さんは「ハイブリッド米の父」と呼ばれる農学者・袁隆平(Yuan Longping)氏を尊敬しており、彼のように生涯を農学研究に捧げ、多くの農民に幸福をもたらそうと思っている。(c)People’s Daily/AFPBB News