保護して懐いた野生のツル、当局が動物園へ連れ去り インド
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【4月14日 AFP】インド北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州アメティ(Amethi)で農業を営むモハンマド・アリフさん(30)は、野生動物当局によって連れ去られたオオヅルの解放を求めている。
アリフさんは以前、けがをしたオオヅルを保護し、回復するまで世話をした。1か月半後に野生に戻そうとしたが、オオヅルはアリフさんの家の周辺を離れようとしなかった。バイクに乗って出掛けようとすると後を追い掛けてきたり、手から餌を食べたりした。
アリフさんは13日、AFPの取材に応じ「ツルは日中、自分の家族の元に戻り、夕方には私の家に来ていた。午後におなかがすくと、家の扉の前で待っていることもあった」と述べた。
アリフさんとオオヅルの動画はSNS上で話題となり、インスタグラム(Instagram)で30万人近いフォロワーを獲得した。
しかし、アリフさんとオオヅルの友情は先月、突然切られた。当局がオオヅルを捕獲し、車で4時間以上離れた同州カンプール(Kanpur)の動物園に連れて行ったのだった。
オオヅルは現在、小さなおりに隔離されている。アリフさんはこの「友人」の解放を求めている。
アリフさんは11日、動物園を訪れオオヅルと再会した。ツルは興奮して羽ばたき、飛び跳ねていた。「動物園に到着すると、すぐに私の声に気付いてくれた」「とても落ち込んでいるように見えた。私が刑務所から解放してくれると思ったのかもしれない」
この感動的な再会の様子を収めた動画がオンラインで拡散された。さらにメディアがオオヅルの窮状を報じると、市民から同情の声が上がり、解放を求めるオンライン嘆願書には4000筆が集まった。
嘆願書のサイトには「ツルは何も悪いことはしていない。人間と仲良くすることが罪なのか?」と言った声も寄せられていた。
オオヅルは湿地に生息する首が赤い鳥。飛ぶ鳥の中で最も体高があり、最大1.8メートルになる国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト(Red List)」では「危急」に指定されている。
世界自然保護基金(WWF)によると、インドに生息するオオヅルの個体数は2万羽未満となっている。
アリフさんは「友人」について、森か野鳥保護区のどちらかに返すべきだと訴える。「あのツルはおりの中でなんか暮らしたことはなく、ずっと自由だった」
アリフさんは自由になったオオヅルが自分の元に戻って来ると確信している。「解放された途端、私の所に戻って来るだろう」と述べた。(c)AFP/Abhaya SRIVASTAVA and Sumit DUBEY