「一帯一路」高速鉄道、タイ部分は大幅遅れ 対中深入りへの警戒も
このニュースをシェア
【4月23日 AFP】タイの首都バンコクからラオスを縦断し中国・雲南(Yunnan)省昆明(Kunming)市まで結ぶ高速鉄道計画のタイ国内部分の工事が、大幅に遅れている。中国の「一帯一路(Belt and Road)」構想の一部を成すものだが、歴史的建造物が壊されることへの批判や、完成すれば対中関係が強まりすぎるのではないかとの警戒感も広がっている。
タイの貧困地域イサーン(東北部)。青々とした田んぼに、コンクリート製の支柱が立ち並んでいた。
2010年に打ち出された高速鉄道のタイ国内部分は総延長約600キロ、総工費は54億ドル(約7200億円)相当に上る。プラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-o-Cha)首相は、開通すれば対中貿易の拡大を通じて経済が活発化すると期待を示している。
完成した暁には、バンコクと、ラオスとの国境の町ノンカイ(Nong Khai)の間で中国製列車が最高時速250キロで運行される予定だ。
バンコクから車で1時間半、普通列車で5時間かかるナコンラチャシマ(Nakhon Ratchasima)には、解体予定の古い駅の一つがある。
ラマ5世(King Rama V)により1900年に開設された駅は老朽化し、古ぼけた木製ベンチの下に犬が寝そべっていた。壁には、高速鉄道での素晴らしい旅をうたうカラフルなポスターが貼られている。
タイ国有鉄道(SRT)はこの駅を取り壊した後、ガラスと鋼鉄製の16倍の規模の駅舎に建て替える予定だ。
歴史ある、王室ゆかりの建物を解体することには地元から反対の声も上がっている。
タイ建築家協会(ASA)のイサーン地域担当者、ウィーラポン・ジョンジャルーンジャイ(Werapol Chongjareonjai)氏はAFPに対し、「高速鉄道計画に反対しているわけではなく、古いものと新しいものとの共存を願っている」と話した。
ウィーラポン氏は、現在の駅舎を数メートル移動させ、観光スポットにすることを提案している。新しい駅と並び建つ形になる。駅舎の解体工事は今年初めに始まる予定だったが、ウィーラポン氏ら活動家は、何とか延期させることに成功した。