遺族をネットで誹謗中傷 韓国・梨泰院雑踏事故
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■反発をあおるネット右派
29歳の娘を亡くしたイ・ジョンミン(Lee Jung-min)さんはAFPに対し、「梨泰院事故の遺族は、明らかに危険な兆候があったにもかかわらず、当局が大惨事を防げなかった理由を知りたいと思っている」と語った。ジョンミンさんはやつれ、無精ひげが生えていた。
遺族の一部は「真実を知り、関係者の責任を追及するために」家族会を立ち上げたという。
だが、ネット右派は、こうした会の立ち上げを政府批判と捉えた。遺族は慰謝料目当てで、反政府勢力だとバッシングし、反発をあおった。
専門家は、政府が梨泰院の雑踏事故が政権に与える影響を懸念していると指摘する。保守政党が前回、政権を握っていた2014年には、旅客船セウォル(Sewol)号が沈没して300人以上の死者・行方不明者が出た。事故対応の不手際をめぐり、当時の朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-hye)政権に批判が集中した。
一部の与党議員が議会で遺族を批判したのをきっかけに、遺族に対するネットリンチが行われるようになったとジョンミンさんは言う。
■自殺者に対する首相のコメント
梨泰院の事故から2日後、韓悳洙(Han Duk-soo)首相は「憎悪に満ちたコメントや流言、事故の生々しい画像」を拡散しないよう呼び掛けた。
24歳の妹を亡くしたキム・ユジン(Kim Yu-jin)さんは、遺族が何度も訴えているのに、政府はバッシングをやめさせるための策をほとんど講じていないと話した。
昨年12月には、梨泰院で事故に巻き込まれた16歳の生徒が自殺した。遺族は、ネットでたたかれ、ショックを受けたことが理由の一つだと語っている。
だが、韓首相は、政府に責任はないとしている。もっと「しっかり」していれば、自殺することはなかったのではないかと話した。
ソウル市内に設置された追悼施設さえ、当局が撤去も辞さないとしたことから、極右のユーチューバーが付近で嫌がらせをしながらライブ配信を行うなど、火種となっている。
キムさんは、遺族は愛する家族を悼む以外に、故人を守るためにネット上で闘わなくてはならないと話す。
毎日ネットにあふれ返った妹を中傷する書き込みに目を通し、それぞれのサイトに削除要請を出している。
「絶望的な作業であるのは分かっている」とキムさん。「でも私がやらないと。他に誰が妹のために闘ってくれるというの?」と問い掛けた。(c)AFP/SHIM Kyu-Seok