【4月4日 AFP】北極圏の氷層が気候変動で融解してしまう前に過去の氷を取り出し、サンプルとして保存する「アイスメモリー(Ice Memory)」計画が4日、始動した。

 計画ではイタリア、フランス、ノルウェーの研究者8人から成るチームが、北極圏のノルウェー領スバルバル(Svalbard)諸島で採取した氷を、南極に輸送して保存する。

 計画を進めるアイスメモリー財団(Ice Memory Foundation)の副会長で古気候学者のカルロ・バルバンテ(Carlo Barbante)氏は「北極のような高緯度圏の氷河は急速に溶け始めている。(氷に)含まれる情報が完全に失われる前に回収し、地球の気候に関する貴重なアーカイブとして未来の科学者のために保存したい」と述べた。

 研究チームはクレバスの多いホルテダールフォナ(Holtedahlfonna)氷原のキャンプに滞在。標高1100メートル、気温マイナス25度にまで下がるこの地で、最大125メートルの深さの「氷床コア」から直径10センチの円柱状の氷のサンプルを3週間かけて掘削する。

 3世紀前にまでさかのぼる氷床コア内に閉じ込められている化学物質を分析すれば、過去の環境に関する貴重なデータを得ることができる。

■南極に「氷の記憶の聖域」

 採取されたサンプルのうち1セットは直ちに分析に回される。もう1セットは海路でいったん欧州に運ばれる。その後、南極大陸にある仏伊両国の共同観測基地へ移送され、マイナス50度の「氷の記憶の聖域」と呼ばれる、雪の下にある保管庫で保存される。

 チームは「研究者は今後数十年の間に、アーカイブの利用に関する新しいアイデアや技術を手にするだろう。現時点では未知の情報を、氷の中から取り出せるかもしれない」としている。

 アイスメモリー財団は、欧州アルプス(Alps)や南米アンデス(Andes)でも氷床コアの採取を行ってきた。今後、タジキスタンとヒマラヤ山脈(Himalayas)でも同様の計画を実施する予定だ。(c)AFP/Ursula HYZY