【3月31日 AFP】映画「ジュラシック・パーク(Jurassic Park)」シリーズや玩具メーカーは、ギザギザの歯をむき出しにしたティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)像を見直す必要があるかもしれない──T・レックスには歯を覆う唇があった可能性が高いとする研究結果が30日、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 論文著者の一人、米オーバーン大学(Auburn University)の純古生物学者トーマス・カレン(Thomas Cullen)氏は「T・レックスのような獣脚類の恐竜の口元は、唇のように何らかの軟組織で歯が覆われていた可能性が高い」と述べた。

 これまで考えられてきた「ワニのように唇がなく、口を閉じた状態で歯が露出して見える」T・レックス像とは異なるという。

 研究チームは、各地の博物館が所蔵しているさまざまな獣脚類の化石を幾つかの項目に沿って調査した。調査項目の一つでは、現生動物の中で最も獣脚類に近いワニと獣脚類の歯のエナメル質の摩耗パターンを比較した。

 カレン氏は「歯科医がよく言うように、エナメル質を正常に保つには水が必要」で、「歯があまりにも長時間空気にさらされるとエナメル質がもろくなり、ひび割れたり、病気になったりする可能性が高まる」と説明する。

 カレン氏によるとワニには唇がないため、歯の内側よりも外側のエナメル質が速く摩耗するが、T・レックスにはそのようなパターンが見られなかった。「T・レックスの歯は内側も外側も同じ厚さで、唇のある動物により近い」という。

 研究チームは、T・レックスの歯が大きすぎてむき出しになっていた可能性についても、唇のあるトカゲと比較した。その結果、やはり歯は唇で覆われていた可能性が高いとの結論に達した。

「現生のオオトカゲの中には、驚くほど非常に巨大な歯が唇で完全に覆われているものがいる。そうした歯と唇の関係は、獣脚類の恐竜でもほぼ同様なことを突き止めた」としている。

 カレン氏は大ヒットした「ジュラシック・パーク」シリーズについて、「最初はその時点で解明されていたことに忠実であろうとする素晴らしい仕事をした」と評価した。ただし、それ以降は正確な描写からはかけ離れていると指摘した。(c)AFP