【3月28日 AFP】南アフリカの警察はこのほど、レイプ殺人で有罪判決を受け収監されていた受刑者が、昨年5月に自らの死を偽装し脱獄していたと発表した。警察は男の行方を追っている。

 脱獄が分かったのはタボ・ベスター(Thabo Bester)受刑者。ブルームフォンテーン(Bloemfontein)にある民間企業が運営する刑務所で昨年5月、焼身自殺したと考えられていた。

 だが警察は今月26日、DNA検査の結果、ベスター受刑者の監房で見つかった焼死体は別人のものだったと分かったと発表した。頭を鈍器で殴られたのが死因で、死後に火が付けられたことも検視から分かったという。

 殺人事件として新たに捜査が始まっており、警察は情報提供を呼び掛けている。

 警察の担当者は27日、AFPに対し「この犯罪者を見つけ、どのように死を偽装したのか解明することがわれわれの最優先事項だ」と話した。

 ベスター受刑者は、フェイスブック(Facebook)で女性を誘い出してレイプし、金品を強奪したことから「フェイスブックのレイプ魔」と呼ばれている。被害者のうち少なくとも1人を殺害した。2012年にレイプ、強盗、殺人の罪で終身刑を言い渡された。

 脱獄が明らかになると、国内からは怒りの声が上がった。女性の人権団体は長年、女性に対する暴力への政府の対応は不十分だと非難していた。

 昨年10~12月だけでも、全国でレイプ事件1万2000件が通報されている。

 べスター受刑者が死を偽装しているのではないかとの疑惑は昨年11月、現地メディア「グラウンドアップ(GroundUp)」が伝えた。

 その後、ヨハネスブルクの高級住宅街でべスター受刑者が食料品の買い物をしているとされる写真も出て来た。さらに、同受刑者がソーシャルメディアを介して接触してきたと主張する複数の女性も現れた。

 ベスター受刑者は獄中から、偽名を使ってメディア事業詐欺を展開していたと報じられている。米ニューヨークに滞在しているふりをして、獄中からある企業のイベント会場にビデオ形式で登場し演説する様子を捉えた動画が残っており、拡散されている。

 急進左派の野党「経済的解放の闘士(EFF)」は、今回の脱獄は「矯正当局の能力が欠如し、汚職がまん延していることの証拠だ」と非難した。(c)AFP