【3月28日 AFP】米国の学校長が、伊ルネサンス美術の巨匠ミケランジェロ(Michelangelo)の彫刻「ダビデ像」の画像を児童に見せたことで辞任に追い込まれた。これに対し、像を所蔵する伊美術館の館長が27日、ヌードとポルノを混同する「ゆがんだ考え」だと批判した。

 米フロリダ州タラハシー(Tallahassee)の学校で校長が、11~12歳のクラスにダビデ像の写真を見せたところ、保護者からポルノ画像だとの苦情が出た。これを受け、校長は先週、辞任に追い込まれた。

 伊フィレンツェ(Florence)にあるアカデミア美術館(Galleria dell'Accademia)のセシリエ・ホルバーグ(Cecilie Hollberg)館長は、美術史に対する「大きな無知」の表れで、「誤った厳格主義」の産物だとAFPとの電話インタビューで語った。

「ルネサンスを象徴するミケランジェロのダビデ像は、何世代にもわたって世界中で認められてきた。今回の件は本当に驚きだ」とし、「ヌードとポルノは明らかに違う。それを混同するのはゆがんだ考えだ」と批判。歴史や芸術史に対する「大きな無知」は「非常に悲しい」と語った。

 ダビデ像は1501~04年にかけて制作されたミケランジェロの傑作とされる大理石像で、聖書の英雄ダビデが巨人ゴリアテに石を投げて倒そうとする姿を表現している。

 ホルバーグ氏は「この作品に不快感を持つ人は、西洋文化の根幹に関わる重大な問題を抱えている」とも主張。「私たちは自分たちの文化や歴史とのつながりを本当に失っている。古代ギリシャで行われていた五輪など皆、裸だったのに!」と述べた。

 校長が辞任した米国のチャータースクール、タラハシ-・クラシカル・スクール(Tallahassee Classical School)の教育委員長によると、ルネサンス美術の授業では毎年ダビデ像の画像が使われていたが、今年は手続きに反して保護者に事前通知されていなかった。

 同委員長は「フロリダ州でも、このチャータースクールでも、親の権利という概念が何よりも優先される」と述べた。(c)AFP/Gildas LE ROUX