【3月28日 AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は28日に公表した2022年の年報で、ロシアのウクライナ侵攻を受け各国は怒りの声を上げたが、他の地域での人権侵害には沈黙しており、西側諸国の「二重基準」が鮮明になったとの見方を示した。

 年報は、西側諸国はサウジアラビアの人権問題やエジプトにおける弾圧、イスラエルのパレスチナ人に対する扱いなどには沈黙を貫いていると批判している。

 アムネスティのアニェス・カラマール(Agnes Callamard)事務総長は「ロシアのウクライナ侵攻に際しての西側諸国の見事な対応は二重基準を際立たせた。他の多くの国連憲章(UN Charter)違反への対応を見ると、筋が通っていないことが鮮明になった」と述べた。

 侵攻開始後、多くの国が対ロシア制裁を実施し、ウクライナから避難した人々を受け入れた。国際刑事裁判所(ICC)は、ウクライナで行われた戦争犯罪の疑いについて捜査を始めた。

 一方、イスラエル政府は昨年、パレスチナ人を居住地から追放して入植地を違法に拡大し、占領下のヨルダン川西岸(West Bank)地区内の既存の入植地や前哨基地を合法化する措置を講じたほか、イスラエル軍によるパレスチナ人殺害が相次いでいるにもかかわらず、西側諸国は「抑圧体制」の停止を要求できていないと年報は指摘している。

 また、サウジアラビアでは、人権活動家は自らの意見を述べただけで「不当な裁判」を受けて投獄されており、1日で81人の死刑が執行されたこともあるとした。

 エジプトでも、人権活動家や記者、抗議デモ参加者、反体制派など多数が身柄を拘束されており、「拷問の横行が続いている」としている。

 さらに年報は、欧州各国はウクライナから避難した人々を歓迎したが、シリアやアフガニスタン、リビアの難民に対しては同様の態度を示さなかったとも批判している。(c)AFP/Alice HACKMAN and Joris FIORITI