【3月28日 Xinhua News】中国の科学者による量子誤り訂正の最新研究成果を記した学術論文「離散変数で符号化した論理量子ビットによる損益分岐点の打破」(Beating the break-even point with a discrete-variable-encoded logical qubit)が23日、国際学術誌「ネイチャー」オンライン版に掲載された。

 中国科学院院士(アカデミー会員)の兪大鵬(Yu Dapeng)氏の指導の下、南方科技大学深圳量子科学・工程研究院超導量子計算実験室助理研究員の徐源(Xu Yuan)氏のプロジェクトチームは、福州大学の鄭仕標(Zheng Shibiao)教授や清華大学の孫麓岩(Sun Luyuan)副教授らの研究チームと共同で、量子誤り訂正プロセスをリアルタイムで繰り返すことで量子情報の寿命を延ばし、物理システム内で誤り訂正を行わない場合の符号化量子ビット寿命の最高値を上回ることに成功した。

 超伝導量子回路システムに基づく量子情報処理分野の研究はここ数年、目覚ましく発展してきたが、量子コンピューターシステムにおけるエラー率が従来のデジタルコンピューターよりはるかに高いため、実用価値のある汎用量子コンピューターを構築する上で、環境ノイズによる妨害から量子情報を効果的に保護する量子誤り訂正は不可欠とされてきた。

 これまでの量子誤り訂正の符号化では、一つの論理量子ビットに対して複数の冗長化した物理量子ビットが必要で、大きなハードウエア資源のコストを必要とする。しかも、エラーが発生するチャネル数もビット数の増加とともに増え「訂正するほどエラーが増える」状態に陥る可能性があり、量子誤り訂正後の効果が訂正しない場合の最高値を下回り、訂正のメリットが得られないため、訂正技術の実用化や拡張性の発展を阻む主要なボトルネックとなっている。

 研究チームは、高いコヒーレンス性を持つ量子システムの開発により、エラー率の低い誤りの検出方法を設計。量子誤り訂正などの実験手法を改良、最適化したことで、ボーズ・ハバードモデルにおいて離散変数による二項符号化の論理量子ビットを実現した。量子誤り訂正プロセスをリアルタイムで繰り返すことで、量子情報の寿命を延ばし、物理システム内で誤り訂正を行わない場合の符号化量子ビット寿命の最高値を上回ることに成功した。これにより、損益分岐点を超えた量子誤り訂正のメリットを生み出し、拡張性汎用量子コンピューティングの実用化に向けて重要な一歩を踏み出した。(c)Xinhua News/AFPBB News