【4月1日 AFP】ウクライナ軍の軍用ヘリコプターMi8を操縦するアナトリーさん(39)は、ヘリ内部に幾つも取り付けられた補強パネルを指さしてこう言った。「ふざけている、装甲がないんだ」

 砲手のアナトリーさんはこのヘリに乗り組み、ロシア軍の陣地に向かってロケット弾を発射するという5週間の連続シフトをこなす。昨春以降、約300回の戦闘任務に参加してきた。

 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は西側の友好国に近代兵器の供与を求めている。ウクライナ東部で旧ソ連製のヘリに乗る操縦士は、このヘリでは技術面でロシアに勝てないと認める。

 アナトリーさんが乗るMi8は1986年に旧ソ連で製造された。本来は輸送用で装甲がないにもかかわらず、ウクライナ軍は攻撃用として配備している。

 近くには、より小型で操縦性が良く、装甲も厚い攻撃用ヘリMi24が駐機している。Mi24は複数のMi8と共に出撃する。

 Mi24の操縦士ウラジスラウさんは英語で「怖いよ、(ロシア軍は)ヘリを破壊する新たな攻撃手法を編み出したから」と語った。

 ウラジスラウさんによると、ウクライナ軍のヘリはロシア軍に検知されないよう低空を飛行するが、ロシア側の戦闘機は140キロ離れた地点の1000メートル上空からでも攻撃可能だ。

「相手側の偵察のレーザー照射でわれわれの機体がマークされ、ロケット弾の攻撃を受けてしまう」

 ウラジスラウさんは自分が乗り組むMi24に目線を送り、「このヘリは35年物だが、『若い』ヘリと言っていい。Mi8は45年物だから」と話した。

 ウラジスラウさんによると、ここまで古い機体になると金属疲労の問題が出てくる上、国内で変速装置やエンジン、回転翼を新たに製造することもできない。

「(ロシア軍から)ロケット弾1発が当たるだけで、ヘリは落ちる」とウラジスラウさん。「われわれには(米軍ヘリの)『ブラックホーク(Black Hawk)』や『アパッチ(Apache)』が必要だ。Mi24やMi8によく似ており、ミサイルは新型だ」

 Mi8を操縦するアンドリーさん(28)も「もしアパッチやブラックホークがあれば、状況は一変する。米欧が持っている物の方がいい」と主張した。

 西側諸国からは、ウクライナが求める近代的な戦闘機は、操縦士を長期にわたって再訓練する必要があることから、有効性を疑問視する声も出ている。

 ウラジスラウさんはブラックホークやアパッチと自身が乗るヘリの類似点を挙げ、再訓練は「たった半年で済む」と言った。またアナトリーさんも「生き延びたければ、すぐに覚えるものだ」と応じた。(c)AFP/Anna MALPAS