【3月27日 AFP】ロシア西部トゥーラ(Tula)州の小さな町ボゴロジツク(Bogoroditsk)の教会で、霧雨が降りしきる中、ウクライナで戦死した兵士の葬儀に大勢が集まっていた。

 ロシア政府が特別軍事作戦と称するウクライナ侵攻を開始してから、数え切れないほどの兵士が命を落とし、英雄とたたえられ、埋葬されてきた。イーゴリ・スクブコさん(23)もその一人だ。

 雨の中、埋葬された兵士の家族の泣き声だけが聞こえてくる。

「もっとずっと長生きするはずだったが、こうなる運命だったのだろう」とバディム・イゴーニン(Vadim Igonin)町長は言った。

 ロシアではウクライナ侵攻のことを「戦争」と呼ぶと、厳罰に処される恐れがある。

 イゴーニン氏は弔辞で、スクブコさんは「特別軍事作戦で任務を全う」して死亡したと述べた。また、地区の軍関係者は「こうした人々や、その勇気のおかげで、わが国は持ちこたえている」とたたえた。

 スクブコさんは追叙され、すすり泣く妻に勲章が手渡された。ロシア国歌が流れる中、地面にひつぎが下ろされると、3発の礼砲が撃たれた。

 ロシア各地の墓地に、軍服姿で笑顔を見せる若い兵士の写真や造花の花輪が飾られた墓が並んでいる。

 ボゴロジツクの南方80キロにある小さな町エフレモフ(Yefremov)の入り口には、戦死した兵士の写真が張られた2枚の横断幕が掲げられており、そこにはこう書かれている。「ロシアの英雄に栄光あれ!」

 バディム・アルテュシュコフさんは、夫婦で息子の墓参りをしていた。アレクセイさん(42)は「志願兵」として戦闘に参加し、激しい攻防が続くウクライナ東部バフムート(Bakhmut)で昨年11月に殺害されたという。

 墓地には、この町出身の兵士が少なくとも11人埋葬されている。

 住民は「やるせない気持ち」で同胞の死を受け入れているとアルテュシュコフさん。「でも、(攻撃を)やめるべきだと言う人は一人もいない」と続けた。

 ロシア国防省は昨年9月、ロシア側の戦死者が5937人に上ったと明らかにしたが、それ以降、新たな情報を公表していない。

 西側諸国は、ロシアとウクライナの死傷者数はそれぞれ約15万人に上ると推計している。(c)AFP/Victoria LOGUINOVA-YAKOVLEVA