【3月28日 AFP】日本人が春に桜の花を楽しむように、メキシコでも春に咲く花をめでる文化がある。約100年前に日本人造園家が導入したジャカランダ(ハカランダ)の木だ。

 毎春、首都メキシコ市では、ジャカランダが咲き誇り、市内一面をすみれ色に彩る。

 歴史研究者のセルヒオ・エルナンデス(Sergio Hernandez)氏によると、1920年代にメキシコ市市内の大通りにジャカランダの木を植えたのは、日本から移住した松本辰五郎(Tatsugoro Matsumoto)氏だった。以来、花見は市の恒例行事となった。

「日本には桜の花を楽しむ花見がある。メキシコにもジャカランダの花を楽しむ花見がある」

 松本氏は1896年メキシコ市に移住した。日本とは生育環境が異なるため、メキシコでは桜が咲かない可能性があると指摘し、代わりにブラジルからジャカランダの導入を進めた。

 20世紀初頭、松本氏の仕事は軍人出身で後に大統領を務めたポルフィリオ・ディアス(Porfirio Diaz)氏らのエリート層からたたえられた。

 松本氏は生前、前の大統領府でもあるチャプルテペク城(Chapultepec castle)の庭も手掛けたとエルナンデス氏は説明する。

 同氏は、「春が来ると私たちの市は濃いすみれ色に染まる。これはメキシコが松本氏と日本文化からの受け取った遺産だ」と話した。(c)AFP