【3月23日 AFP】ウクライナ東部ドンバス(Donbas)地方で、同国兵のグリゴリーさん(39)は慣れた手つきで軍用トラックのハンドルを操り、泥だらけの曲がりくねった道を時にスリップしながら走行していく。

 ここ半年間、旧ソ連で設計された「ジル(ZIL)131」を運転し、兵員と砲弾を前線に近い砲撃拠点まで輸送する任務を担ってきたグリゴリーさん。「一番難しいのは坂を上がる時だ」と話した。

 寒く雪深い冬が終わり、春の雨が降って気温が上がってくると、ドンバスの戦場に再び泥が戻ってきた。

 数か月にわたりウクライナ・ロシア両軍が攻防を繰り広げているバフムート(Bakhmut)周辺も、数日間晴れたかと思えば、また雨に見舞われた。

 世界でも有数の肥沃(ひよく)な土壌を誇るウクライナで、東部の道はたびたびこの黒い土に覆われる。

 こうなると両軍共に、昨年11月からほぼこう着した状態が続く前線を押し動かすような進撃は困難になる。

 グリゴリーさんが所属する砲兵部隊の隊長はAFPに対し「双方が天候の回復を待っている」と話し、「大規模攻勢は不可能か、いずれにしても極めて難しい。時間が利するのは防御側だ」と述べた。

 バフムート付近に配備された歩兵部隊の幹部も、「兵士は皆、塹壕(ざんごう)の泥の中にとどまって陣地を守らなければならない」として、雨は「大問題」だと述べた。

「われわれも相手側も、今は装軌車は使えない。雨がやんで晴天が3~4週間続けば、間違いなく大規模攻撃がある」との見方を示した。(c)AFP/Emmanuel PEUCHOT