【3月20日 Xinhua News】中国の清華大学(Tsinghua University)車両・運載学院の楊殿閣(Yang Diange)教授率いる研究チームの論文がこのほど、機械学習分野の研究成果を紹介する学術誌「Nature Machine Intelligence」に掲載され、自動運転の「信頼できる持続的進化」技術を用いることで、あらかじめ設定された対応策なしでも、自動運転車がなじみのない状況への対応を自ら学んで安全走行を確保できることを示し、自動運転車の大規模な商用化を実現する可能性を引き寄せた。

 安全性は自動運転技術にとって核心的な命題とされている。楊氏によると、自動運転車は現在、特定の典型的なシナリオで運転操作を実証する能力を備えているが、大規模な商用化にはなお安全上の懸念がある。自動運転はデータ駆動型の人工知能(AI)技術に依存しているが、AIは既知のシナリオしか処理できないため、AIアルゴリズムが抱える「ブラックボックス問題」や時折不具合が起こるという特性と相まって、なじみのない状況に遭遇した時に車が制御できなくなる可能性があり、安全運転を非常に困難にする。

 研究チームが提案する「信頼できる持続的進化」技術は、この問題解決に新たなアイデアを提供する。同技術はAIの信頼性の動的評価に基づいて学習と訓練を行うことで、自動運転車がなじみのない新たなシーンに遭遇した時、その運転能力が基本の自主的回避から持続的に向上し始め、安全確保を前提としながらより良い運転性能にたどり着く。同技術の核心的な課題は、車両性能を持続的に最適化し、従来のAIの学習過程で起こり得たパフォーマンスのぶれを回避することにある。

 研究チームのメンバーで同学院博士研究員の曹重(Cao Zhong)氏は「多数のシミュレーションと実車テストを通して、自動運転車は新たに遭遇するさまざまなシーンを学習して慣れ親しみ、持続的に進化することで、より良い対応策を得ることができる」と述べた。また実験結果から、車両の逆走などシステムにあらかじめ設定されていない突発的シナリオが発生した際、同技術は追加の指示なしで自主的に回避措置をとり安全運転を保証することが可能になることを示しており、走行距離やデータが蓄積されるにつれて、パフォーマンスが向上し続けると説明した。

 同技術は「2022年北京科学技術冬季五輪」の自動運転実証プロジェクトで成功裏に応用された。チームは次の段階で、自動運転の実用化に向けた大規模な公道実証を実施し、より多くの運転シナリオで同技術の対処能力と自己改善能力を検証する予定だという。(c)Xinhua News/AFPBB News