【3月17日 AFP】ウクライナ政府は、11世紀に建立されたキーウ洞窟大修道院(Kyiv Pechersk Lavra)の修道士らに対し、ロシアとのつながりを理由に立ち退きを求めている。

 パブロ・レビッド(Pavlo Lebid)修道院長は、「立ち退く意思はない」と宣言している。しかしAFP取材班は14日、多数の車両が修道院から出て行くのを目撃した。

 アベルと言う名の修道士は、「不測の事態」に備えてかさばる物を移動させたと説明した。「聖職者の多くはここ以外に行く当てがない。ここは私たちの家だ。今回の決定は晴天のへきれきだった」と訴える。

 金色のドームを備えるキーウ洞窟大修道院は、ドニエプル(Dnieper)川を見下ろす場所に位置する。国内でも有数の正教会の修道院には、最近までロシア正教会の影響下にあったウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)の修道士らが住んでいる。

 同正教会は、ロシア正教会の最高指導者キリル総主教(Patriarch Kirill)がウクライナ侵攻を支持したことを受け、ロシア正教会とのつながりを絶つと発表した。

 しかし、ウクライナ政府はキーウ洞窟大修道院がモスクワ総主教庁との関係を完全に絶ったとは考えていない。

 キーウ洞窟大修道院など複数の宗教施設は昨年、ロシアとの関係を疑われ、ウクライナ保安当局から家宅捜索を受けた。

 10日には、オレクサンドル・トカチェンコ(Oleksandr Tkachenko)文化情報相が、キーウ洞窟大修道院の一部を無償で貸し出すことを定めたウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)との契約の終了を発表した。複数のメディアが期日は3月29日だと報じている。

 キリル総主教は、国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長を含む宗教界や世界の指導者に訴えるとともに、ウクライナの最後通告に「深い懸念」を示した。

 ウクライナは独自の正教会を設立しており、1月にはキーウ洞窟大修道院でクリスマス礼拝を行った。モスクワ総主教庁は、この新たな正教会を認めていない。

 複数の人に話を聞いたところ、立ち退きを支持すると答えた。

 アルテムさん(37)は「私たちには自分たちの教会がある。(ロシアとの)共通点は何もない」と述べた。また、イーゴリさんは「親ロシア派は歓迎されない」と述べた。

 一方、信者のマリーナさん(53)は「私たちは聖職者を守らなければならない。どんな犠牲を払っても、最後まで彼らを守る用意はできている」と述べた。(c)AFP