【3月16日 People’s Daily】中国は二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年までに減少に転じ(ピークアウト)させ、2060年までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)にする目標を掲げている。方針が明確にされたことで中国のエネルギー貯蔵産業は急成長し、新型電力システムを構築する重要な役割を果たしている。

 中国電力企業連合会によると、2022年末段階で中国の揚水式発電の総設備容量は世界トップの4579万キロワットに達し、多くの関連技術が世界のトップまたは先端レベルに達している。2023年末には揚水式水力発電の総設備容量は5000万キロワットを超えると推定されている。

 10年前に比べ、中国のエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池のエネルギー密度は2倍以上になり、さまざまな重要材料の国産化も実現している。また、圧縮空気エネルギー貯蔵技術は急速に発展。フライホイール(回転体)エネルギー貯蔵にとって重要技術である大容量のフライホイールと高速モーターのブレークスルーを成し遂げ、ナトリウムイオン電池も頭角を現している。 エネルギーのモデル転換は加速しており、2030年には中国の新型エネルギー貯蔵設備容量は1億5000万キロワットに達すると推定されている。

 中国のエネルギー貯蔵産業の発展により、コストが着実に低下している。中国エネルギー研究会エネルギー貯蔵専門委員会の陳海生(Chen Haisheng)主任は「最近の10年間で、中国の新型エネルギー貯蔵のコストは年平均で10~15%低下した。中でもリチウムイオン電池と圧縮空気エネルギー貯蔵のコストは急速に低下し、揚水式水力発電のコストに近づいている」と説明する。

 日中は屋上の太陽光設備で発電し、夜間はエネルギー貯蔵電池がオフピーク時の電力を吸収し、電力消費のピーク時に工場エリアへフィードバックする-。江蘇海基新エネルギー公司では、こうした太陽光発電とエネルギー貯蔵の統合ステムにより、工場の電力コストを節約している。配電企業の国家電網無錫供電公司によると、江蘇省(Jiangsu)無錫市(Wuxi)の工業においてオフピーク時の電力価格は1キロワット時あたりわずか0.28元(約5.47円)前後だが、ピーク時は1.15元(約22.48円)にはね上がる。エネルギー貯蔵にこの価格差を利用することで、海基エネルギー公司は年間の電力コストを50万~60万元(約977万~1173万円)ほど節約できるという。

 これは、エネルギー貯蔵の多様な利用方法の一例だ。電力システムの資源、電力網、負荷などのプロセスの統合・開発を通じて、エネルギー貯蔵はクリーンエネルギーの利用レベルと電力システムの運用効率の向上に役立っている。

 エネルギー産業では現在、エネルギー貯蔵の大規模化や産業化、市場化を加速することがコンセンサスになっている。「揚水式水力発電産業発展リポート2021」によると、揚水式水力発電所の数は2025年までに200か所を超え、建設中の発電所を含めた設備容量は1億キロワットにまで到達すると予測されている。

 国家エネルギー局の担当者は「2025年末までに新型エネルギー貯蔵の設備容量は3000万キロワットを超え、年間平均成長率は50%以上となるだろう」と見込んでいる。(c)People’s Daily/AFPBB News