【3月13日 AFP】(更新、写真追加)ノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)を受賞した作家の大江健三郎(Kenzaburo Oe)氏が3日未明、老衰のため死去した。88歳だった。講談社(Kodansha)が13日、発表した。

 同社によると、家族葬がすでに執り行われたという。

 大江氏は1935年、現在の愛媛県内子町に生まれた。第2次世界大戦(World War II)中に幼少期を過ごし、戦後は米国の民主主義の原則に魅了された。戦争で「深く傷つき」ながらも「再生への希望に満ちた」世代の作家であると自認し、平和主義、反核思想で知られた。

 東京大学(University of Tokyo)でフランス文学を学び、実存主義とルネサンス期の人文主義に傾倒。在学中から小説を書き始め、58年、日本の村人に捕らえられた米軍の黒人兵士を描いた短編「飼育(Prize Stock)」で芥川賞を受賞した。

 63年に誕生した長男の光(Hikari Oe)さんに知的障害があったことで大江氏の私生活は一変し、翌64年にはこの実体験から若い父親を主人公にした「個人的な体験(A Personal Matter)」を発表した。

■反戦運動家

 光さん誕生の年、大江氏は広島で原水爆禁止世界大会に参加し、どんな状況にも屈しない被爆者に出会い、65年、被爆者たちの証言を記録した「ヒロシマ・ノート(Hiroshima Notes)」を発表した。

 94年にノーベル文学賞を受賞した際には「あいまいな日本の私」と題する記念講演で、日本固有の文化と戦後の急速な西洋化との間に生じた緊張に照らして自らの立場を語った。

 同年、文化勲章は辞退し、「民主主義に勝る権威と価値観を認めないからだ」と米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に語った。

 晩年はさらに運動のテーマを脱原発、障害者の権利保障、改憲反対などへ広げ、積極的に活動していた。(c)AFP/Etienne BALMER / Kyoko HASEGAWA