【3月10日 AFP】フィリピン沿岸警備隊の航空機が9日、中国との係争海域となっている南シナ海(South China Sea)南沙諸島(スプラトリー諸島、Spratly Islands)上空をジャーナリストを乗せて飛行していたところ、「直ちに去れ」と中国語で命じられた。

 命令は、比機の1000メートル下の海上にいた中国海警局(沿岸警備隊)の船から出された。周辺には数十隻の船がいた。

 AFPは、比中をはじめ複数の国が領有権を争っている小島や岩礁を上空から取材する貴重な機会を与えられたメディアの一つだった。

 メディアが乗った航空機が、フィリピンが実効支配する島や砂洲の上空を飛行する間、中国側の船の無線担当者は中国語と英語で7回発信。このうちの1回で、「中国の岩礁(の周辺海域)に侵入しており、安全上の脅威に当たる。誤解を避けるため、直ちに去れ」と命じた。

 これに対し比機の操縦士は、自国領内を飛行していると返答した。

 約4時間のメディアツアー中に、比沿岸警備隊は同国が実効支配する九つの島と岩礁の周辺海域で、20隻近くの中国船を発見。中には比側が「海上民兵」組織と呼ぶ集団の船もあった。

 フィリピンが領有権を主張する仙賓礁(サビナ礁、Sabina Shoal)近辺でも「海の民兵組織」に属するとされる船が17隻確認された。

 中国外務省は10日、同国が南沙諸島とその周辺海域の領有権を有する以上、自国当局の船がその海域で「通常任務」を遂行することは「合理的かつ合法的」だと主張した。

 比沿岸警備隊は定期的に、同国が実効支配する島などの周辺を航行する中国船の情報を、写真や動画を含めて公開している。

 同警備隊の広報担当者は、こうすることにより自国民が状況を把握できるだけでなく、他国も中国の行為を糾弾することができ、また中国側が「公に釈明したり、完全なうそをついたりせざるを得ない」状況をつくることができると話した。(c)AFP/Ron Lopez and Jamillah Sta Rosa