【3月26日 AFP】土とわらを材料に作られる日干しれんがと土壁の家は長らく、貧困の象徴としてばかにされてきた。だが、ハンガリーでは近年、コンクリートよりも低価格で環境にやさしい素材として人気が高まっている。

 材料に土を用いた家のリノベーションを請け負うヤーノシュ・ガシュパール(Janos Gaspar)さん(48)はAFPに「向こう3年間は休みなしだ。関心は非常に高い」と話した。ガシュパールさんは土壁の家を200軒以上建ててきた経験がある。

 れんがや土を使った家は新石器時代にはすでにつくられていた。

 ガシュパールさんの仕事仲間で建築家のアダム・ビハリ(Adam Bihari)さん(33)はこうした家を「自然の建築」と呼び、地域でアクセス可能な材料を用いることが基本だと話す。「ハンガリーの人々は、手元にある材料、足元にある材料を使って家を建てる方法をずっと知っていた」

 ビハリさんは北西部アーチ(Acs)の民家で、日干しれんがでできた壁に土が塗られる様子を指しながら、「この壁は100年前に作られ、100年後も残っているはずだ」と話した。

■「未来の建材」

 世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約8%はコンクリートに起因するが、それとは対照的に、土が材料の家は「最終的に自然に返り、人工物を一切残さない」とビハリさんは言う。

 ビハリさんは毎年、ガシュパールさんと共に講習会を開き、多くの人に技術を教えている。この日も、れんがを作る様子を見学しに10人以上が集まった。

 ガシュパールさんは、木枠に土を押し込みながら「1分でれんがが1つできる。大体2万個あれば家が1軒建つ」と説明した。

 数世紀にわたり続けられていた土の家作りは、40年にわたる共産政権の時代にすたれてしまった。

 日干しれんがの壁はしばしばセメントで覆われ、こもった湿気が腐敗を生じさせた。

■「そのままでスマート」

 ビハリさんによると、材料となる土には調温作用があり、夏が暑く冬が寒いハンガリーには最適の素材だという。

 ティメア・キッシュさん(42)はすでに土壁の家を所有しているが、修繕について学ぶために講習会に参加した。夏は涼しく、冬でも暖かい自宅については、「人が来ると、エアコンがないことに驚かれる」と話した。

 ビハリさんによると、調湿作用もあり、ぜんそくがある人には良い影響があるという。また、防火性にも優れ、有害物質を含まない。

「『スマート』物件や『スマート』れんがなんてものも聞くけど、自分に言わせればナンセンスだ。土はそのままでスマートなのだから」 (c)AFP/Peter MURPHY