【3月6日 AFP】デンマークの首都コペンハーゲンから北西に約400キロ、ロルドの森(Rold Forest)の奥深くに隠れていた冷戦(Cold War)時代の広大な核シェルターが、先月から博物館として初めて一般公開されている。内部はまるでタイムカプセルのようにすべてが当時のまま残っている。

 この地下シェルターはソ連の核実験やキューバ危機を受け、北大西洋条約機構(NATO)の強い勧めで1963~68年に建設された。「リーガン・ウエスト(Regan Vest)」と呼ばれ、核戦争が起きた際、政府機能と君主を30日間置く想定で設計された。

 館長のラース・クリスティアン・ノルバッハ(Lars Christian Norbach)氏は、デンマークの民主主義の「最後のとりで」となるはずの場所だったとAFPに語った。

「水爆は、核攻撃の際の対処方法を完全に変えてしまった」と、博物館の学芸員で歴史家のボーディル・フランゼン(Bodil Frandsen)氏はAFPに語った。「それまでの地下壕(ごう)では爆風に耐えられない。だから新しいものが必要だった」

 原子力災害が発生した場合、政府の存続は国家の主権にとって不可欠だと同氏は説明。「少なくとも国の一部の支配を主張できる政府がある限り」、主権を持つ民主国家としてデンマークは存続できると語った。

 だが、この地下壕は一度も使用されることなく2003年に閉鎖され、12年に初めて公開された。

 天井がアーチ形になっている長い廊下沿いに、君主用の寝室、食堂、政府の会議室、薄暗いラウンジの60年代風の装飾が、薄暗い明かりにぼんやりと照らされている。「紙や鉛筆まで、すべてが当時のままのタイムカプセルだ」とノルバッハ氏。

 90分の見学ツアーでは施設内を約2キロ歩くが、それでも回れるのは全体の約40%だ。

「冷戦時代の不安を若者に知ってもらうという意味で、ここはとても重要な場所だ」とフランゼン氏。ウクライナ侵攻をめぐりロシアと西側諸国の緊張が高まる今、核シェルターは再び注目されつつある。

「冷戦は再び現実味を帯びてきており、私たちはこの博物館でそれを訴えている」とノルバッハ氏は言い添えた。

 映像は2月に撮影。(c)AFP