【3月5日 AFP】メキシコ中東部トラスカラ(Tlaxcala)州伝統のカーニバル「ロス・ウエウエス・マドゥルガドレス(Los huehues madrugadores)」は、かつての植民地支配を風刺し、復讐(ふくしゅう)の精神をよみがえらせるという点で、中南米の数あるカーニバルの中でも特異な存在だ。

 色白で青い目をした紳士の仮面、何世紀も前の貴婦人のようなドレスと凝った帽子。祭りに参加する人々が扮(ふん)しているのは、大西洋を越えて「新大陸」へ渡った欧州人だ。スペイン人の征服者(コンキスタドール)、エルナン・コルテス(Hernan Cortes)のように丁寧に整えた顎ひげや口ひげを生やした男性の仮面も多い。

 羽根飾りの付いた仮面、手刺しゅうが施された服、欧州風の衣装は、この地域を形作ってきた文化の衝突を表している。

「侵略者たち、特にその習慣や風習を嘲笑する祭りだ。先住民トラスカラの人々には、彼らは非常に軟弱に見えた」。地元の歴史を描いた壁画を案内していた観光ガイドのエドゥアルド・クアウトレ・ソチテモトルさんは語った。

 アステカ帝国と敵対していたトラスカラ人は1521年、アステカの首都テノチティトラン(Tenochtitlan、現メキシコ市)を占領するために征服者コルテスと同盟を結んだ。それにより一定の特権が保証されたものの、トラスカラ人はスペイン人の大地主たちから排除されていた。

「征服が成し遂げられると、大農園では音楽と踊りによる盛大な宴が開かれたが、私たち先住民は入れなかった」と踊り手のカルロス・ゴメス・バスケスさんは説明した。

 現代のメキシコでは、何世紀も前の敵だけが嘲笑の対象ではない。「今の伝統は、現代の政治家を嘲笑することだ」とガイドのソチテモトルさんは言った。(c)AFP