【3月2日 Xinhua News】中国の有人宇宙船「神舟15号(Shenzhou-15)」の乗組員はこのほど、中国が独自開発した宇宙ステーション用2光子顕微鏡による軌道上での検証実験ミッションを実施し、成功した。プロジェクトチームが先月27日に明らかにした。

 世界で初めて宇宙飛行の過程で2光子顕微鏡を使って宇宙飛行士の皮膚の表皮と真皮上層の3D画像を取得した。2光子顕微鏡は、2光子吸収と蛍光励起に基づく非線形光学イメージング技術で、高い解像度と強力な3次元クロマトグラフィー能力、優れたイメージング深度などの特徴を持つ。2光子顕微鏡によるイメージング技術の宇宙ステーション軌道での運用・応用は、これまで国際的に実現していなかった。

 宇宙ステーション用2光子顕微鏡の開発を巡っては、2017年に北京大学(Peking University)国家生物医学イメージング科学センター主任の程和平(Cheng Heping)院士(アカデミー会員)率いる研究チームが、重さわずか2・2グラムのプローブを備えた小型2光子顕微鏡の開発に成功し、基礎を築いた。19年には、中国有人宇宙プロジェクト弁公室の支援の下、北京大の程氏と王愛民(Wang Aimin)氏、中国宇宙飛行士科学研究訓練センターの李英賢(Li Yingxian)氏、北京航空航天大学(Beihang University)の馮麗爽(Feng Lishuang)氏の各チームと関連企業や研究機関が合同で、程氏を総責任者とするプロジェクトチームを発足。チームは、顕微鏡の小型化に関する数々の技術的課題を克服し、昨年9月に成功にこぎ着けた。

 チームのメンバーで北京大学未来技術学院の助理研究員を務める王俊傑(Wang Junjie)博士によると、宇宙ステーション用2光子顕微鏡は昨年11月12日、宇宙貨物船「天舟5号(Tianzhou-5)」で中国の宇宙ステーションに無事輸送され、世界で初めて宇宙に出た2光子顕微鏡となった。

 宇宙ステーション用2光子顕微鏡は、宇宙飛行士の皮膚構造や細胞の3次元分布をサブマイクロメートルの解像度で鮮明に表示することができ、皮膚表面の構造や成分などを非侵襲的にイメージングする能力を備える。イメージングによって、表皮の角質層、顆粒層、有棘層、基底層や真皮上層などの3次元構造を可視化する。

 程氏は「中国のハイエンド精密光学機器の製造レベルを示す重要な成果だ」と指摘。今回の検証実験では、世界初の2光子顕微鏡の軌道上での正常運用、国内初のフェムト秒レーザーの軌道上での正常運用、国際的に初となる宇宙飛行士の細胞構造と代謝成分情報の軌道上での観測など、複数の「初」を達成したとし、「宇宙飛行士の軌道上健康モニタリング研究に新たなツールを加えただけでなく、将来的に中国の宇宙ステーションプラットフォームを用いた脳科学研究を行うための重要な技術手段を提供したことにもなる」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News