【2月28日 People’s Daily】北京市中心部・西直門のスーパーマーケットで、買い物客がバッテリーの切れたスマートフォンを決済端末にかざし、ミネラルウオーターを購入した。支払いはデジタル人民元。今年に入り、デジタル人民元はオフライン・電源オフでも決済ができるようになった。

 近年の中国はデジタル経済の技術革新が成長の原動力となっており、デジタル人民元の機能も豊富となっている。

 中国人民銀行が発行した「中国デジタル人民元研究開発の進展」白書は「中国の電子決済、特にモバイル決済の急速な発展により、市民の間でデジタル決済が習慣化している」と指摘している。

 浙江大学(Zhejiang University)国際共同ビジネススクールのデジタル経済・金融革新研究センターの共同主任・盤和林(Pan Helin)氏は「デジタル人民元は利便性と安全性において中国のデジタル経済を後押ししている」と強調する。

 春節(Lunar New Year、旧正月、今年は1月22日)の連休中、デジタル人民元はさらに浸透した。広東省(Guangdong)、浙江省(Zhejiang)、江蘇省(Jiangsu)、山東省(Shandong)などにあるデジタル人民元試行都市では、デジタル人民元の消費クーポンを発行。電子商取引プラットフォーム大手の美団(Meituan)によると春節連休中、デジタル人民元による注文数は前年同期の 4 倍近く、ユーザー数は 5 倍以上、取引額は6倍以上に増えた。

 光大銀行(Everbright Bank)金融市場部マクロ研究員の周茂華(Zhou Maohua)氏は「デジタル人民元と消費クーポン、電子商取引プラットフォームを組み合わせることで、消費の回復が加速している」と解説する。

 中国人民銀行はこれまで17の省・自治区・直轄市の都市で試行プロジェクトを実施。2022 年以降、各地で「消費促進」「新型コロナウイルスとの闘い」「低炭素社会の推進」などをテーマに、約50回にわたるデジタル人民元のキャンペーンが行われている。2022年末までに流通したデジタル人民元の在庫は136億1000万元(約2670億1000円)に上る。

 一部の農村地域や山岳地帯では、銀行口座を持っていない住民がデジタル人民元を介した支払いや金融サービスを享受できるようになっている。中国で銀行口座を持たない海外の観光客も、スマートフォンにアプリを入れれば、デジタル人民元で少額の支払いを行うことができる。デジタル人民元の普及は、実体経済と市民の暮らしにメリットをもたらしている。(c)People’s Daily/AFPBB News