【3月5日 AFP】ウクライナ西部で自転車の修理で生計を立てていたドミトロさん(45)。現在は、弟のロマンさん(34)と共にウクライナ軍第14機械化旅団で戦車などの軍用車両を修理する任務に就いている。

「どちらも基本的にやることは一緒だ」とドミトロさん。「もちろん、違いはあるが」

 ハルキウ(Kharkiv)州の東部戦線後方にある軍の秘密工場では、ロシア軍から鹵獲(ろかく)した歩兵戦闘車「BMP3」の整備が進められていた。

「(BMP3は)ウクライナ軍にはない」「修理するには、別の車両を分解して部品を入手しなければならない」と、勤続30年のベテラン整備兵ルスランさん(47)は言う。

 片隅では、ウクライナ、ロシア両軍が使用する歩兵戦闘車「BMP1」の分解作業が進められていた。金属を徐々に削るたびに火花が散る。

 もう一方では、ヘッドランプを装着した兵士4人が移植手術を行う外科医さながらに、取り外した巨大なエンジンのピストン、配管、ワイヤを凝視していた。部品に油を差し、大きなスパナを手に戦闘車両の中に潜り込んでいる兵士もいる。

「修理は1日で終わるものもあれば、1か月かかるものもある」とルスランさん。マニュアルはないが、ロシア製のBMP3の修理や走行に不安は抱いていない。「何でもインターネットで分かる」と肩をすくめた。「重要なのは、部品がそろうかどうかだ」

 敷地内では、「Z」の文字がくっきり残る榴弾(りゅうだん)砲や戦車「T80」も修理を待っている。ロシア軍が放置していったものだ。

■「ロシア人は自分たちの装甲車に無頓着」

 T80の走行用ベルトには、ドンバス(Donbas)地方の泥がこびりついている。この車両は国内の別の場所に運ばれ、電子機器をエンジニアが調べることになっている。

 ルスランさんは「ロシア製の装備の大半は、それほど手を加える必要はない」と説明した。重量19トンのBMP3についても、「ひどい損傷は受けていない」と言う。

「ロシア人は自分たちの装甲車に無頓着だ。修理できる場合もある。やり方が分からないから捨てていくのかもしれない」

 司令官によれば、この整備工場では昨年2月24日の侵攻開始以降、ロシア軍が置いていったか、ウクライナ軍が鹵獲したロシア製の装甲車を100台は扱ってきた。

 修理が終わり、ウクライナ軍の識別マークの白十字や、国章の三つまたのほこを塗れば、戦場に再配備される。生まれ変わったロシア製の戦車や装甲車で狙う相手は、ロシア軍だ。

 ウクライナには今後、米国の主力戦車「M1エイブラムス(M1 Abrams)」31台、英国の主力戦車「チャレンジャー(Challenger)2」とドイツの主力戦車「レオパルト(Leopard)2」がそれぞれ14台供与される。

 ルスランさんは、これから到着する戦車についても整備を行うかどうかについてはコメントを避けたが、必要な技術は備えていると話した。

「戦車を修理する訓練を受け、仕組みを理解している兵士はそろっている」 (c)AFP/Phil HAZLEWOOD