【2月27日 AFP】インドでは首相や大富豪から労働者や修行僧まで、ヒンズー教徒であれば一生に一度は聖なる川ガンジス(Ganges)の源流、ゴームク(Gaumukh)への巡礼を夢見ている。

 だが、険しい道のりの終点にあるこのヒマラヤ山脈(Himalayas)の氷河は今、急速に後退している。独イエナ大学(University of Jena)の研究者シータル・ベプール・ラママーシー(Sheethal Vepur Ramamurthy)氏は現地でAFPに、「ものすごい勢いで毎日、秒刻みで融解している」と述べた。「目の前で氷河が滴り落ちている。(中略)これが厳しい現実だ」

「母なるガンガ(Ganga)」と呼ばれる全長約2500キロのガンジス川は、ヒンズー教のアイデンティティーの中心に位置する。また、日々の暮らしや仕事でこの川に依存する人口は5億人に上る。

 氷河の麓の町ガンゴトリ(Gangotri)に住むヒンズー教の僧侶、サンジーブ・セムワルさん(53)は「ガンジス川はわれわれの文化、遺産であり、アイデンティティーだ。もしもなくなってしまえば、われわれの生活や存在も消える」と語った。

 セムワルさんの一家は代々、雪解け水が流れる川の岸にある寺院に仕えてきた。ここには、ガンジス川の女神ガンガが祭られている。

 父親の時代には数百人しかいなかった巡礼者も、今では経済的向上とインフラ整備のおかげで年間数十万人に上るようになった。「私が生まれてからの半世紀の間に、この地を訪れる人の数や、地域の気象パターンも変わってしまった」

 ワディア・ヒマラヤ地質研究所(Wadia Institute of Himalayan Geology)によると、ガンジス川の主要な水源であるガンゴートリー氷河(Gangotri glacier)は90年間で1.7キロ後退した。

 独立から75年、インドはかつて宗主国だった英国を抜き、世界第5位の経済大国となった。また世界第3位の二酸化炭素排出国、世界第2位の石炭消費国でもある。そして今、干ばつや洪水、水不足がますます深刻化している。(c)AFP/Bhuvan BAGGA