【2月19日 Xinhua News】中国内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)根河市に住むエベンキ族の覚楽・布利托天(ジュエレ・ブリトテン)さん(39)は、先祖から受け継いだ獣皮のコートを身にまとい、広大な森の雪原の中でトナカイの群れを呼び戻していた。

 ここは根河市から80キロ余り離れた金河林業局が管理する営林場。ジュエレさんはトナカイを60頭余り放牧している。同市オルグヤ・エベンキ民族郷に住むエベンキ族にとって、森の中でトナカイを放ち、餌を食べさせるのが伝統の放牧スタイルであり、ジュエレさんも2、3日ごとに厚く積もった雪の中を歩き、深い森の中でトナカイの群れを探さなければならない。

 エベンキ語で「エベンキ」は「大山林に住む人」、「オルグヤ」は「ポプラが生い茂る場所」を指す。オルグヤ・エベンキは中国最後のトナカイ飼育集落の名称であり、エベンキ族は中国で唯一のトナカイを飼育する少数民族でもある。オルグヤのエベンキ族は2003年に山を下りて根河市に定住したが、トナカイ飼育の伝統は今も残されている。

 ジュエレさんは北京市の学校を卒業すると、同市の病院に就職して画像医学の仕事に就いたが、大都会の生活の中でも故郷の荒野が自分を呼び戻す声を常に感じていたという。2015年、心の声に従ったジュエレさんはオルグヤに戻り、年老いた母親からトナカイの飼育を引き継いだ。

 トナカイ飼育の生活は単調であり、孤独と苦労を伴う。大興安嶺の奥地にある放牧場は近くの町から10キロ余り離れており、携帯電話の電波も届かない。特につらいのは冬の寒さで「中国極寒の地」と呼ばれる根河市にある部落は最低気温が氷点下50度を下回ることもある。普通の人なら屋外に数分いるだけで耐えられなくなる気候だが、オルグヤのエベンキ族の人々にとっては生活の場であり、ジュエレさんも骨を刺す寒さの中を膝上まで埋まる雪をかき分け、トナカイの群れを追って数キロを移動する暮らしを続けている。

 取材で同行した1月12日は、森を2時間歩いただけでトナカイの群れを見つけたが、昨年末は12月23日から毎日8時間かけて群れをさがし、年明けの元日にやっと見つけることができたという。

 地元政府も彼らの生活を改善するため尽力してきた。移住先の根河市内の住宅を無償で提供したほか、山中のトナカイ飼育地にも断熱性の高いトレーラーハウスを提供した。この車輪付きの小さな家は車でけん引でき、オルグヤ・エベンキの人々がトナカイを連れて営林場を転々と移動するのに役立っている。政府は観光業も発展させ、彼らの収入が増えるよう後押ししている。

 ジュエレさんは「トナカイの飼育や鹿茸(ろくじょう、生薬)の販売、観光サービスで毎年10万元(1元=約19円)余りの収入がある。家族を養うことに問題はない」と語る。ただ、新型コロナウイルスの影響を受けた3年間は収入が減少した。「夏が待ち遠しい。夏になれば新たな鹿茸の収穫も済んでおり、何よりも根河の観光が再び盛んになる」と期待を示した。(c)Xinhua News/AFPBB News