【2月16日 東方新報】中国のSNS(ネット交流サービス)で、恋愛の終わりを意味する「失恋」「分手」などと検索すると、涙を流す自撮り写真や悲しみにあふれた投稿が大量に表示される。どの国にもある投稿なのだろうが、SNSが生活に深く入り込んだ中国では赤裸々な投稿が目立つ。なかには「失恋日記」と題して、行き場のない感情を動画や文章で毎日投稿する人も。「失恋第57日目」という長期連載まであった。別れた相手にしてみたら、いつ自分のプライバシーが暴露されるかと気が気ではないだろう。

 中国でよくあるのが別れ話の最終段階で、相手からSNSをブロックされて感情的になるケース。意思疎通のルートを断たれた腹いせに、誰でも見られるネット上に感情的な投稿をしてしまうのだ。一度ネットで拡散した情報は簡単には削除できないことからも懸念されている。

 こうした懸念を受けて、中国では1月1日に女性の権利保護に関する法律が改正され、施行された。条文には「恋愛の解消や離婚後に、女性を困らせたり、嫌がらせをしたり、女性のプライバシーや個人情報を開示、流布することは禁止」と明記された。

 これまではSNSなどでプライバシーを暴露された場合、名誉毀損(きそん)などの裁判をするしかなかったが、今年からは裁判所に被害を申告し、認められたら中止命令や削除命令が出される。通常の裁判とは異なり、申請から72時間以内、緊急の場合は24時間以内に裁判所は判断することになっている。

 この法律を最初に適用したのは、四川省(Sichuan)崇州市(Chongzhou)の裁判所だった。中国メディアによると、未成年の女性である陳(Chen)さんと別れた男性の李(Li)さんは、陳さんの私的な写真や過去の恋愛、中絶経験などを繰り返しSNSに投稿し、陳さんを侮辱した。陳さんは学校に行けなくなり、不眠症に悩まされたほか、自傷行為に走るなど大きなダメージを負った。

 裁判所は陳さんの申請を受け、改正法が施行された1日当日、関連する投稿の中止と削除を李さんに命じた。中国メディアが「適用第1号」を大々的に報じたため、各地の裁判書に類似の相談や申請が相次いでいるという。

 これまで中国では、「恋愛や家庭の問題に司法は介入すべきではない」との考えが根強かった。しかし、女性が被害者となった残酷なケースが次々と報道されるようになり、世論に押される形で反DV法(2016年施行)などの女性保護に関連する法整備が進められている。(c)東方新報/AFPBB News