【2月16日 AFP】イラク南部でこのほど、約5000年前の大衆酒場跡が発見された。当時の一般の人の暮らしの解明が期待されるという。

 酒場跡が見つかったのは、ナシリヤ(Nasiriya)の北東に位置する古代都市ラガシュ(Lagash)遺跡。ラガシュは現在のイラクに存在したシュメール文明の最初の都市の一つとして知られる。

 調査を行った米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)と伊ピサ大学(University of Pisa)の合同チームは、紀元前約2700年ごろに使われていた原始的な冷蔵システム、大型のかまど、客用のベンチ、ボウル150個を発見した。

 ボウルの中には魚や動物の骨があった。シュメールで広く飲まれていたビールが提供されていた痕跡も見つかった。

 発掘プロジェクトの責任者ホリー・ピットマン(Holly Pittman)氏はAFPに対し「冷蔵庫、大勢に出せる分の食器、客が座る椅子に加え、冷蔵庫の後ろには食事の調理に使われたと思われるかまどがあった」と話した。

 このことから、普通の人が来て食事をする場所だったこと、個人宅ではなかったことが分かるという。

■エリート層ではなく普通の人の研究

 現在のイラク南部では穀類を栽培し農作物の余剰分ができるようになると、食物の生産に直接関わらない新しい社会階級が誕生した。これが世界最古の都市の発展につながった。

 発掘に携わったイラク人考古学者、バケル・アザブ・ワリ(Baker Azab Wali)氏は、チグリス(Tigris)川とユーフラテス(Euphrates)川の合流点に程近いラガシュの住民らは「農作、畜産、漁猟だけではなく物品の交換でも生計を立てていた」と説明した。

 発掘は昨年11月に完了しており、今後採取された資料の詳細な分析が行われる。

 ピットマン氏は「都市の誕生初期については、まだ分からないことがたくさんある。それがわれわれの研究テーマだ」と語った。

「この大都市に住んでいた、エリート層ではない人々の居住区域や職業の特性を明らかにしたい」「他の遺跡で行われた調査は王族や聖職者に焦点を当てたものが多い。そうしたものも重要だが、普通の人々(の研究)も重要だ」

 映像は11日撮影。(c)AFP/Asaad Niazi with Tony Gamal-Gabriel in Baghdad