【2月15日 東方新報】日本で回転すし店での迷惑行為がSNSを通じて大きな社会問題となっているが、中国でもSNSを通じて一般人の迷惑行為が暴露され、激しい反発が起きている。

「うちの子の教育のどこが悪いって言うんだ。文句があるなら警察を呼べ!」

 昨年8月、中国の電車の中で乗客同士が罵り合う映像がSNSで拡散した。高速鉄道の中で騒ぐ子どもがいたので、乗客の女性が注意した。すると子どもの親たちが逆ギレしたため、女性との間でののしり合いになり、口汚い中傷や威嚇が飛び交った。その様子を別の乗客が撮影し、SNSにアップしたのだった。

 中国ではこれまでにも、鉄道車内で他人の指定席を占拠し続ける行為や、地下鉄の車内を汚して食事する行為などが、他の市民がスマホで撮影してSNSにアップすることで、糾弾されてきた。そんな風に暴露された行為の中には、暴力や破壊行為など犯罪にあたるものもある。多くの人は純粋に義憤や正義感からそれらの行為を世間にさらそうと考えるのだろう。

 だがスマホやSNSが普及した今日では、結果は必ずしも予想した通りにはなるとは限らない。自らがネット暴力の加害者側に立ってしまう危険性さえある。

 北京市の王暁増(Wang Xiaozeng)弁護士は「乱闘や違法駐車などの犯罪行為があったとしても、撮影した映像は関係当局への通報に使うべきで、個人情報を分からなくするなどの処理をせずにSNSで公開してしまうと、個人情報保護法に抵触する可能性がある」と指摘する。

 先に触れた高速鉄度内での罵倒合戦の例では、一幕が暴露されると騒いだ子供の親たちへの非難が渦巻いた。ネット上では、「教養のない一家」などの文字がつけられて親たちの顔写真が拡散し、彼らの個人情報を探し出して人物を特定するような呼びかけまでなされた。

 撮影者の乗客は、あまりの加熱ぶりに驚いて、自ら映像を削除した上で、一家に対するネット暴力をやめるよう呼びかけた。

 さらに言うなら、暴露される映像を見る側の慎重さも必要だ。

 河北省(Hebei)保定市(Baoding)で起きたという屋台主同士のいさかいを「暴露」した映像には、ピンク色のダウンジャケットを着た女性が、屋台の脇で泣き声を上げてうずくまる様子が写っていた。地面には彼女が売っていた食べ物が散乱しているようにも見えた。女性は、経済的な苦しさから屋台で生活費を稼いでいた女子大生で、売れ行きの悪い別の屋台主にやっかまれて商売を妨害された挙句、殴られたという話だった。

 ネット上では、屋台主の人定が暴かれ、罵詈雑言の集中砲火を浴びた。直接、電話で罵しられたこともあったという。当然、商売どころではなくなった。

 ところがしばらくするとSNS上で拡散したストーリーが事実と異なることが分かってきた。実際には、女性が別の屋台を遮るような位置に屋台を出したので、言い争いが起きた。そもそも女性は大学生ではなく、同業の屋台主に殴られたという事実もなかったという。

 一部の不誠実な者は、SNSに映像をアップする際に編集や文字の説明で事実を歪曲する。人々の怒りや同情を買い易いストーリーが拡散すれば、ネット民たちによる個人情報の暴露や特定にも拍車がかかる。そのような歪曲した事実を「暴露」する目的は、SNSでのアクセス稼ぎだ。見る側は、映像やストーリーの真偽とともに、「暴露」の目的を慎重に見極めなくてはいけない。ましてやアクセス稼ぎに手を貸すようなことは避けたい。

 日本の回転すし店で迷惑行為に手を染めた者たちがアクセス稼ぎを目的としたのか、歪んだ自己承認欲求が理由なのかは不明だが、不誠実な行為が他者を深く傷つけ得ることを現代社会に生きる全ての人に、今一度、思い出して欲しい。(c)東方新報/AFPBB News