【2月26日 AFP】イスラム主義組織タリバン(Taliban)が実権を掌握したアフガニスタンを脱出した元ツアーガイドの女性が、新天地イタリアから祖国のバーチャルツアー(仮想旅行)を開催している。収益の一部は、アフガン女性のための秘密の英語教育資金に充てられる。

 光沢のあるタイル装飾が施されたモスク、要塞(ようさい)やにぎわうバザール。ファティマ・ハイダリさん(24)は、伊ミラノの寮から「ズーム(Zoom)」を使ってアフガン西部ヘラート(Herat)を案内する。

 ハイダリさんはヘラートでツアーガイドをしていた。2021年8月にタリバンが実権を掌握すると、アフガンを脱出。現在はミラノのボッコーニ大学(Bocconi University)で国際政治を学んでいる。

 今ではアフガンを訪れようという勇気ある観光客はほぼいなくなったが、外国人に祖国の美しさを知ってもらいたいと今でも熱い気持ちを抱いている。

「アフガニスタンと聞くとみんな、戦争やテロ、爆弾を思い浮かべる」と、ハイダリさんはAFPに語った。だが、アフガンの素晴らしさ、文化、歴史を世界に紹介したいという。

 英ツアー会社、アンテイムド・ボーダーズ(Untamed Borders)を通じて行われるツアーにはこれまで、英国やオーストラリア、ドイツ、インドなどから参加者があった。

 ツアーの収益の3分の1は、アフガニスタンの若い女性のためひそかに開催されている英語教室の資金に充てられる。

 タリバンは実権を掌握してから、中等教育や大学での女子教育の停止を命じるなど、女性への締め付けを強めている。

 ハイダリさん自身、常に本を手に入れるため闘ってきた。それが教育への情熱につながっている。

 7人きょうだいの末っ子として生まれ、中部ゴール(Ghor)州の山地で育った。両親はハイダリさんに羊の世話をさせた。

「男の子の通う学校がある、川辺の牧草地に羊を連れて行き、こっそり授業を聞いていた」と当時を振り返る。「ペンがなかったので、砂や土に書いた」