【2月15日 AFP】女性用の緊急避妊薬「モーニング・アフターピル」があるならば、性交渉の前に男性が必要に応じて服用する「アワー・ビフォーピル」ができる日は来るのだろうか。開発中の新薬を雄のマウスに投与したところ、1時間以内に生殖能力が低下し、ほぼ1日後に復活したとする実験結果が14日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。

 論文の共著者である米ワイル・コーネル医科大学(Weill Cornell Medicine)のヨッヘン・バック(Jochen Buck)氏は、精子の「スイッチをオンにする」働きを持つ酵素の可溶性アデニル酸シクラーゼに着目したと説明。この酵素が阻害されると、精子の動きが悪くなるという。

 この酵素を阻害する化合物をマウスに投与したところ、精子が30分から1時間で一時的に不活発化した。避妊効果は投与から2時間までは100%で、3時間後には91%に低下した。24時間後に生殖能力は正常に戻ったとしている。

 バック氏によれば、研究チームは、単回投与で1時間以内に作用し、6~12時間効果が持続する非ホルモン性ピルの開発を目指している。

 男性用の避妊薬については現在、ジェル状のホルモン剤などのヒト臨床試験が進められているが、いずれも、効果を発揮し、再び精子が正常化するまでにそれぞれ数週間から数か月を要する。

 また、これまでの研究では、可溶性アデニル酸シクラーゼが慢性的に阻害され、生殖能力のない男性は、腎臓結石の罹患(りかん)率が高いとされてきた。

 しかし、バック氏は、今回の研究ではマウスに副作用は見られなかったと説明。結石ができるのは酵素が阻害される状態が慢性化しているのが原因で、この避妊薬ではそうした問題は起きないないはずだと述べた。

 さらに、3年以内にヒト臨床試験を開始したいとして、製品化までに8年はかかるとの見通しを示した。

 研究に参加していない英アングリア・ラスキン大学(Anglia Ruskin University)の避妊法の専門家スーザン・ウォーカー(Susan Walker)氏は、製品化を疑問視する一方で、即効性があるという利点は「性交渉の相手のピル服用を確認する機会」につながると評価した。(c)AFP/Daniel Lawler