【2月15日 People’s Daily】「中国古筝の故郷」である江蘇省(Jiangsu)揚州市(Yangzhou)では、箏・琴の製作工房が軒を連ね、箏・琴を通した交流や文化活動、大会、後進の育成などが盛んである。近年、揚州の琴箏産業では、科学技術を活用した楽器製作が急速に発展している。

 黒い本体は軽い材質から作られ、白い弦がまぶしい。揚州市琴箏協会の名誉会長を務め、無形文化遺産継承者である熊立群(Xiong Liqun)さんが研究開発した電子筝である。伝統的な箏とは違い、電子筝は環境に配慮した計量複合材で作られ、伝統的な筝の重く、持ち運びが不便という問題を解決している。

 伝統的な箏は調弦が難しかったが、電子筝はウォームギアを採用し、指で簡単に調弦ができる。また、オーディオ出力をイヤフォン・スピーカー切り替えすることができ、近所の人から苦情を言われる心配もなく、グループレッスンの時に先生の話が聞こえなくなってしまう心配もなくなった。

 揚州の486無形文化財集積地区に入ると、琴の音が降り注いでくる。琴箏の制作師である賈洪流(Jia Hongliu)さんは、研究開発チームを率いてスマート教育システムを作っている。このシステムは先端技術を用いて、箏の音や運指、姿勢などをスマート技術で識別・採点し、インタラクティブなフィードバックができる。「私たちは、最新の技術を用いて教育にブレイクスルーをもたらし、伝統音楽芸術を広め続け、その普及と教育が抱える問題を解決したいのです」と、賈洪流さんは語る。

 40年以上の努力を経て、揚州は中国で最大の筝・琴の生産地になるとともに、筝琴芸術文化の一大拠点となった。揚州市琴箏協会の李同志(Li Tongzhi)会長によれば、中国の琴箏関連産業の集積度が極度に高い地域として、揚州は琴箏関連の企業を280社あまりも擁している。同地では毎年65万台の箏と6万5000台の琴が生産され、各付属品は100万セットも作られ、全国シェアの過半数を占める。中でも、生産額が1000万元(約1億9000万円)以上の企業が約20社あり、中国楽器業界トップ50に入る企業も3社ある。

 琴箏産業の繁栄は、関連産業の振興をもたらす。目下、揚州市には螺鈿・玉加工・ケースやバッグ・琴柱・金具・弦などの付属品を作る企業は80社余りある。全国から集まった人々は、ここで琴を買い、聞き、学び、関連する文化活動に参加する。その数は年間のべ10万人にもなり、同地の飲食・宿泊・交通・観光・ショッピング・文化活動・教育など、各分野の消費も促進される。

 教育に力を入れているのも、揚州の琴箏業界の特徴である。揚州には琴箏演奏者の育成拠点が100か所以上あり、学習者は数百万人に上る。同市の小中学校では「1学校1無形文化遺産プロジェクト」という活動が行われ、琴・箏・古典演劇・曲芸・人形劇などのクラブ活動が盛んである。伝統音楽を学校で学ぶことができ、市民がより伝統民族楽器への理解を深め、文化的な素地を築く取り組みが行われている。(c)People’s Daily/AFPBB News