■アサド政権経由で支援?

 イドリブ県に対する国際援助は現在、トルコとの国境に位置するバブアルハワ(Bab al-Hawa)国境検問所を通じた1か所しかルートが存在しない。

 国連(UN)の援助は以前、こうした国境検問所4か所を経由してイドリブ県に届けられていたが、アサド政権を支援して内戦に介入したロシアは、1か所に制限した。

 毛布や豆類などイドリブ県が必要とする支援の80%は、バブアルハワ検問所を経由して供給されているが、地震を受けて支援物資が増えることから、検問所の物流が停滞する恐れがあると援助団体は懸念している。

 シリアのバッサム・サッバーグ(Bassam Sabbagh)国連大使は6日、反体制派支配地域にある国境検問所の追加的な開放を容認しないとの考えを示唆し、「シリア(の政権側支配域)を通じて」全ての支援物資を届けるべきだとの意向を表明した。同大使は「シリアを支援したいならば、政権と調整すべきだ」と語った。

 前出のピッティ氏は、アサド政権側支配地域を経由した支援物資が反体制派支配地域に届く可能性は極めて低いとの認識を示し、「過去10年間の状況と同じ結果になるだろう」と述べた。

■仏政府は二の足

 シリアの被災者への支援を表明しているドイツ、フランス両国はともに、アサド政権を経由した支援の提供には消極的だ。

 ドイツ政府筋によると、同国政府は現時点ではNGOによる「従来のルート」を経由して被災者に支援を提供するという。こうした支援は、トルコ経由で届けられてきた。

 アナレーナ・ベーアボック(Annalena Baerbock)独外相は7日、シリア北西部の国境検問所を追加的に開放するようロシアに求めた。同外相は「ロシアを含めた国際社会の関係当事者は、人道支援が被災者に届くようシリアの政権に対する影響力を行使しなければならない」と訴えた。

 欧米諸国は、アサド政権が2011年に始まった反体制運動を武力で弾圧したのを受け、シリアから外交官を引き揚げ、制裁を科している。このため、フランス政府は、正統性を認めていないアサド政権と調整して援助を提供することに、二の足を踏んでいるとの見方も出ている。(c)AFP/Delphine TOUITOU with AFP bureaus