【2月7日 AFP】トルコ南部で6日に発生したマグニチュード(M)7.8の大地震で深刻な被害を受けたカフラマンマラシュ(Kahramanmaras)県。メスト・ハンチェル(Mesut Hancer)さんはがれきの下から出ている娘のウルマクさん(15)の冷たい手をいとおしむように握って離そうとしなかった。

 マットレスに横たわるウルマクさんの遺体は、今も巨大なコンクリートの下敷きになったままだ。いてつく寒さにもかかわらず、蛍光オレンジのジャケットを着たハンチェルさんは、娘を置き去りにできなかった。悲しみに打ちひしがれながらも傍らに座り、ひたすら娘の手を握っていた。

 この地震によるトルコとシリアの死者は、7日時点で7800人を超えた。ウルマクさんもその一人だ。大勢が負傷し、自宅が倒壊したか余震で倒壊する恐れがあるとして、数百万人が家を追われた。

 時間がたつにつれ、カフラマンマラシュの住民は恐怖と不満を募らせ、過去数十年で最悪の災害となった地震への政府の対応の遅れを批判している。

「政府はどこで何をやっているんだ。がれきの下にいる弟を助けられない。おいとも連絡がつかない。周りを見てくれ。政府の役人は一人もいない」とアリ・サギログルさんは声を荒らげた。父と弟はがれきの下敷きになっており、安否は分からないという。

 カフラマンマラシュ中心部では最初の地震で10階以上の集合住宅8棟が倒壊。強い余震も何度か起きた。1棟あたり約150人が居住していたとみられるが、脱出できたのはごくわずかだった。

 救援の到着を待たず、素手でがれきをかき分けながら家族を捜している人もいた。

 AFPの取材班は、カフラマンマラシュの多くの地域で生存者が集まり、なすすべもなく、たたずんでいるのを目撃した。政府が食料支援や医療支援を行っているのは確認できなかった。