■1822年の「再来」

 今回の地震は、1822年に同じ地域で起きたM7.4の地震が「再来したようなものだ」とミュッソン氏は解説する。同年の地震では、複数の町が壊滅状態となり、数万人が犠牲になるなど甚大な被害を出した。余震は、翌年6月まで続いたという。

 今回の地震の震源はガジアンテプ付近で、深さは17.9キロと比較的浅かった。同氏によると、地震は「アラビアプレート」が北に動いたことで発生。断層がスムーズに動かなかったため、蓄積されたエネルギーが放出されて大地震が引き起こされたと分析する。

 ミュッソン氏は、重要なのは震源ではなく、どの程度の範囲で断層が動いたかだとし、今回は約100キロにわたって断層がずれ動いたと話す。

 同氏は「つまり断層に沿った100キロ圏内のすべての場所が、震源の真上に位置した形になる」との見方を示した。

■地震に脆弱な建物

 英ポーツマス大学(University of Portsmouth)の火山学者カルメン・ソラナ氏は、地震の発生は予測できず、今回地震が襲った地域では耐震設計に基づいた建物だったかどうかが極めて重要だったと指摘する。

 ソラナ氏は「耐震建物はトルコ南部や特にシリアでは数が少なく、(救助隊の活動に)人命救助を依存せざるを得ない」という。

 トルコ政府は1999年の地震を受けて、すべての新築の建物に最新の耐震基準を満たすよう義務化する法案を2004年に可決した。

 レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は、114人が死亡したエーゲ海(Aegean Sea)沿岸での2020年の地震を受け、耐震建物の推進を政治的な優先課題とした。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)のリスク防災研究所のジョアンナ・ウォーカー所長は、2004年の法律が順守されているか調査する必要があるとトルコ政府に呼び掛けている。

 さらに、ウォーカー所長は、「古い建物の安全性を改善できる可能性があるかどうか」も見直す必要があると訴えている。

 一方、シリアでは10年以上に及ぶ戦争で多くの建物が脆弱な状態になっていたとの指摘もある。(c)AFP/Daniel Lawler