【2月7日 CNS】『三体(英題:The Three-Body Problem)』は「SF界のノーベル賞」と呼ばれるヒューゴー賞(Hugo Award)を初受賞し、25か国語に翻訳され、世界的な大ヒット作となった中国のSF小説だ。

 2022年12月10日、中国の動画共有サイト・ビリビリ動画(bilibili)でアニメ版『三体』が配信され、初日に1億回の再生を突破し、市場の空前の熱気を反映した。2023年1月15日、国営中国中央テレビ(CCTV)ドラマチャンネル(CCTV-8)、動画共有サイトの騰訊視頻(テンセントビデオ、Tencent Video)などの複数のプラットフォームでドラマ版『三体』が放送・配信され後、あっという間にSNSで再び話題となり、関連トピックの閲覧数は8億回を超えた。『三体』ファンからは「原作に忠実」「誠実な作品」だと評価され、映画総合プラットフォーム「猫眼電影」のネット放送人気ランキングでは長らく1位を占めている。2022年9月、米国の動画配信サービスサイトのネットフリックス(Netflix)は、『三体』のドラマの海外改作権を買い取り、顧問プロデューサーとして劉慈欣(Liu Cixin)さんと英語版翻訳者の劉宇昆(Liu Yukun)さんを招聘し、2023年に配信する予定だ。アナリストは、『三体』を改作したIP(知的財産権)作品の制作が集中していることは、中国のSF創作が一定の水準に達していることを示しており、SF映画・テレビ市場はすでに大きなポテンシャルを秘めているとみている。

『三体』は、その思想の深さ、登場人物の多さ、時間的・空間的な壮大さなどから、アレンジがかなり難しいとされている。著者の劉慈欣さんは、『三体』三部作(『三体』『三体Ⅱ 黒暗森林(英題:The Dark Forest』『三体Ⅲ 死神永生(英題:Death's End)』)の価値観の複雑さは、どのチームにとっても課題になっていると述べた。

 これまでのところ、『三体』を改作したIP作品は、いずれも市場で好評を博している。特にドラマ版『三体』は、「脚本が丁寧に脚色されている」「登場人物が原作とよく合っている」「俳優の演技力が高い」「製作が優れている」との評価を受けている。このドラマは「原作のファン」を魅了しただけでなく、原作を読んでいない人たちからも多くの賞賛を得た。

『三体』の映画化・テレビ化が集中していることや、中国の他のSF映画・テレビ作品の市場での反響を見ると、中国のSF映画・テレビ市場はかなりの熱意と発展ポテンシャルを秘めていることがわかる。ドラマ版『三体』がCCTV-8で初放送されたことは、このドラマの思想と芸術性だけでなく、「市場での主流化」も認められたことになる。

 近年、中国政府は政策レベルでSF映画・テレビ産業の発展を支援・奨励し始めている。また、中国の科学技術分野における実りある成果により、より多くの中国人が最先端の科学研究やSFに関心を持つようになった。中国の国営通信社「新華社(Xinhua News)」が発表した記事によると、科学の最前線における中国の先進的な成果は、SFクリエイターの想像力に無尽蔵の源泉を与えたという。(c)CNS/JCM/AFPBB News