■「もう痛くない」

 シタナラには現在、元患者約500人が住んでいる。近隣にかつて、インドネシア各地の患者のリハビリセンターとして機能していた病院があったからだ。

 1989年には、英国のダイアナ元皇太子妃(Princess Diana)が同院を訪問。患者と握手する様子が撮影され、ハンセン病に対する偏見に一石が投じられた。

 今日、村民の多くは障害のため正規の職に就けず、街路清掃や三輪タクシーの運転手といった仕事をしている。

 運転手として働くジャミングンさん(60)は10代の時に片脚を失った。義肢を買う経済的な余裕はなかったため、長年竹筒を脚の代わりに使っていた。「痛かったし、歩く時はバランスを取るためにつえを突かなくてはならなかった」

 だが、慈善団体を通じてサガさんが製作した義肢が無料で贈られ、ジャミングンさんの生活は一変した。「足の裏があるから全然違う。本物の足みたいだ。それに、歩く時ももう痛くない」

■「悪循環」

 義肢の費用は1000万ルピア(約8万7000円)に上ることもある。だがサガさんは、払えない人には無料または割引価格で提供している。サガさんによると、これまでに5000本以上の義肢を製作し、全国各地で活用されている。

 ハンセン病をめぐり専門家は、偏見の撲滅ではなく感染者の特定と治療が重視されていることから、患者が感染を隠す傾向があり、根絶を目指す活動が阻害されていると指摘する。

 ハンセン病問題に取り組むNPO「NLRインドネシア(NLR Indonesia)」の代表は「偏見を放置すれば、感染を予防できず、障害が残る人も増え続ける。悪循環だ」と訴えている。

 ハンセン病から回復した人々は、普通の人と同じように扱われること、ただそれだけが望みだと語る。「私たちを偏見の目で見るのはやめてほしい」とサンさん。「物事が良い方へ進み、人々が手を貸してくれるようになればと願っている」 (c)AFP/Dessy SAGITA