【2月2日 AFP】かつて幼い息子にバイオリンを買い与える余裕がなかったスベトザル・ボグダノスキー(Svetozar Bogdanoski)氏(69)は、丹精込めてこの楽器を手作りした。

 それから約40年。ボグダノスキー氏が手掛けたバイオリンは数々の賞を受賞し、世界各地のトップ奏者から製作の注文を受けている。息子は今、スペイン・バルセロナでバイオリニストとして活躍している。

 ボグダノスキー氏はAFPの取材に対し、「息子は小さな頃から才能があって、良い楽器が必要だった。うちには余裕がなかったので、息子にぴったりのバイオリンを自分で作ろうと思い付いたんだ。それが始まりだった」と語った。

 北マケドニアの丘陵地帯にあるベレス(Veles)の町の質素な工房には、ニスや古木の香りが漂う。独学のボグダノスキー氏は、バイオリンを一丁仕上げるのに数か月、時には数年かかることもあるという。

 材料にはボスニア・ヘルツェゴビナ産のメープルやスプルースなどが使われる。厳選して調達した木材は何年もかけて乾燥させるが、実際に使われるのはその10〜15%ほどだと言う。

 画家を目指していたことがあるというボグダノスキー氏は「われわれのこだわり、そして仕事の目標は、バイオリンを作ることではない。(中略)音を生み出すことで、それは錬金術師が賢者の石を探すような、終わりなき探求だ」と語る。

「私たちの仕事は商業的なものではない。創造的なものだ」

 映像は2022年11月撮影。(c)AFP/Darko DURIDANSKI