■子どもたちの未来

 2021年にタイルグリーンを立ち上げたシャランさんは、「25年までに3億〜5億枚のプラスチック袋をリサイクルする」計画だと語った。

 同社は昨年からタイルの販売を開始し、これまでに約4万枚を製造した。今後は、セメントに代わる素材として他の製品も手掛ける予定だ。

 人口が1億400万人に達するエジプトでは、政府が2030年までに使い捨てプラスチックの年間使用量を半分以上減らすと表明し、ごみ処理施設も複数建設する計画。

 だが、世界銀行(World Bank)によれば、エジプトでは3分の2以上のごみが「不適切な管理」により生態系に悪影響を与えている。

 ナイル川中洲のクルサヤ(Qursaya)島の岸辺では、漁師たちが網にかかったプラごみの仕分け作業を行っていた。民間団体「ベリーナイル(VeryNile)」は、こうしたごみを漁師から買い取っており、65人の漁師から「月に10〜12トン」のごみが集まってくる。ごみは、1キロにつき14エジプト・ポンド(約61円)で買い取られる。

 ナイル川の汚染は深刻さを増している。同団体のプロジェクトマネジャー、ハニ・ファウジさん(47)は「(漁師たちは)漁獲量の減少を実感しているだろう。その流れが今後も変わらず、子どもたちの未来が奪われていると感じている」と話した。

 学術誌に掲載された、デンマークと英国に拠点を置く科学者の2020年の研究結果によると、カイロで漁獲された魚の75%超がマイクロプラスチックを含有していた。地中海に面する都市アレクサンドリア(Alexandria)の沖合で漁獲された魚の92%からマイクロプラスチックを検出したと、エジプトの研究者が昨年発表している。

■前向きな一歩

 ベリーナイルはペットボトルのような価値のあるプラスチックを圧縮し、ペレットに加工するリサイクルプラントに送る。食品の包装材など低品質のプラスチックは、セメント工場の燃料として活用されている。

 ファウジさんは、「環境を汚染しないようフィルターや監視システムが導入されている。他の場所を汚しながら別の場所をきれいにすることはできない」と説明した。

 エジプトでの動きは、世界全体が直面する課題への取り組みの一部だ。経済協力開発機構(OECD)によると、世界全体ではプラスチックのリサイクル率は10%未満にとどまっている。

 OECDは昨年、化石燃料を原料としたプラスチックの年間生産量は2060年までに12億トンを超し、プラスチック廃棄物も10億トン以上に達するとの予測を公表した。

 エジプトでは、若者主導の持続可能な取り組みが、環境意識を持った解決策や製品への需要を喚起したとして歓迎されている。一方で、変化は好ましいが、取り組みはまだまだ不十分と活動家はみている。

 環境保護団体「グリーニッシュ(Greenish)」の共同代表モハメド・カマル氏は、「これらの取り組みはバリューチェーン(価値連鎖)を生む方法を見つけ出し、明確な需要もある。エジプトで出ている廃棄物から価値を生み出すのは、前向きな一歩だ」と評価しながらも、「問題解決には至っていない。上っ面をなでるようなものだ」と述べ、直面する課題の大きさを強調した。

 映像は2022年9月と12月に撮影。(c)AFP/Bahira Amin