【2月5日 People’s Daily】木造の平屋の中に1台の機織り機が置いてある。毎日、夕食後には地元住民による機織りの講習会も行われている。

 ありのままの地域文化を保護し、次世代に伝えるため、中国貴州省(Guizhou)で1998年に梭戛(Suojia)生態博物館が造られた。博物館は高興村(Gaoxing)など12の集落からなる。「従来の博物館とは異なり、これは囲いのない博物館で、展示されているのは所蔵品だけではありません」。羅剛(Luo Gang)さんは大学を卒業してすぐ、博物館を造る仕事に配属された。2013年からは館長を務める。彼によれば、この地の人々の服飾・言語・音楽・生産や労働のやり方など、あらゆるものが保存に値する「展示」なのである。博物館は村民自らによる自然・風俗習慣・生産のやり方などの保護を導き、持続的な発展の原則に照らして、ありのままの文化で地元を幸せにする、ということをモットーにしている。

 高興村は2014年に伝統村落に登録された。当時、村では伝統的な機織りはどんどん衰退していた。

 羅剛さんは調査・研究の末に経緯を明らかにした。「第1には交通が便利になって、若い人たちの出稼ぎが増えたことです。第2には、織機自体が村民の自作で、細工が良くなく、壊れやすかったことです」

 そこで、羅剛さんは関連部門に経費を申請し、職人を招聘して伝統的な織機・紡績機の実物を測量し、織機・紡績機各50台を完成させた。また、機械を受け取る村民には、自分が使うだけでなく、各々1人は継承者を育てるように求めた。

 同地の伝統的な住居はそれぞれの場所で採れた材料を使うのが普通で、木造・土造・石造が混在している。茅葺きの屋根は共通で、定期的に交換せねばならない。近年、生活水準が上がるに伴い、少なからぬ住居がレンガ・コンクリート造に置き換わった。しかし、羅剛さんは住民が伝統的住居保護の重要性に気づき始めているのを感じていた。

 2017年に、村民の楊朝忠(Yang Chaozhong)さんの木造住宅が傾いたが、何代も使われた家屋に愛着のある楊朝忠さんは、レンガ・コンクリート造に建て替えることを望まなかった。羅剛さんが調べると、楊朝忠さんの家と同じ状態の家屋が10戸あることが分かった。

 保護経費を申請してから羅剛さんは修繕団体に連絡し、原型をそのまま残す修理に力を入れた。村民達も参加した修理は3か月弱ほどで完成した。

「生態博物館の特色は、村民の自主管理を導き、伝統文化保護への情熱を育むことにあるのです」と、羅剛さんは語る。

 最近では旅行客も増え、新しい産業が生まれつつある。「前に観光客に、伝統芸能はどこで見られますかと聞かれたんです」と、村民の楊二妹(Yang Ermei)さんは言う。「十数人に声をかけて、みんな踊れますし、近所でお金を稼げるなら、やらない手はないでしょう?」楊二妹さんは姉妹と相談して団員を募り、伝統衣装を着て音楽や舞踊を披露している。公演が終わると、刺繍や服飾品を買っていく人も多いという。(c)People’s Daily/AFPBB News