【2月5日 AFP】ウクライナ東部ドネツク(Donetsk)州の村シャンドリホロベ(Shandrygolove)で20年以上にわたり教師として教えてきたオレクサンドル・ポホレロウさん(45)は、時々坂道を歩いて村の学校に向かう。

 だが校舎は今や廃虚と化し、教室でおしゃべりをしたり、叱られたりする生徒たち、授業を教える教師たちの姿はない。

 校舎は昨年4月に破壊された。村と近隣の工業地帯が前線となったからだ。

 ポホレロウさんは現在、妻と暮らす自宅のリビングを仮の教室にして、村に残った少数の子どもたちを教えている。学校に向かうのは砲撃の被害を免れた教材を探す時だけだ。

 侵攻前、ポホレロウさんが生まれ育ったこの村には約1000人が住んでいた。現在、村に残っている人はごくわずかで、子どもは15人しかいない。

 ポホレロウさんは、大きな穴が空いた校舎の外に立ち、「何もかも破壊されてしまった際、教師はどういう感情を抱くと思う?」と投げ掛けた。村では数十棟の建物が同じように破壊された。

 国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)によると、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、同国では数百校が半壊もしくは全壊した。この村の学校もそのうちの一つだ。

 ロシア側はウクライナ軍が民間施設を軍隊の兵舎や弾薬の保管庫として使っていると主張し、学校や民家への攻撃はしないとしている。ウクライナは、シャンドリホロベに対する攻撃などを挙げ、ロシア側の主張を否定している。

 ユニセフによると、ウクライナ内外にいる数百万人の子どもたちは現在、オンライン授業や通信教育に頼っている。だが、この小さな村には電気が通っておらず、もちろんインターネットもない。そのため、オンライン教材で授業を補完したり、リモート授業をすることはできない。

 ポホレロウさんは「校舎が破壊された時、自宅で教えると決めた。生徒たちと直接やりとりできる」と話した。