【1月23日 People’s Daily】2021年9月24日、中国のジーンバンク収集チームの郭永傑(Guo Yongjie)さん、趙延会(Zhao Yanhui)さんらの8人は、エベレストの東ロンブク氷河の標高6212メートルの場所で、須弥扇葉芥の種子収集に成功した。これまで標高6100メートル以上の高地で採取された植物は、世界で15種しか確認されていない。2022年7月、採取したエベレスト植物5種の種子はマイナス20℃の低温倉庫での1年近くの保管の後、すべて無事に発芽した。これは、現在、中国が世界で最も標高の高い植物の種子の収集と保存に成功したことを意味し、今後の関連遺伝資源の研究のために基礎を築いた。

 当時、収集チームが持ち帰ったエベレスト植物の種子は、すぐに昆明市(Kunming)のジーンバンクに送られた。「今後の研究や生態系の復元に役立てるために、種子の採取時期、場所、経度・緯度、海抜、種の情報や初期の品質、量などを、適時正確にデータベースに登録しなければならない」と、ジーンバンク保存センター種子管理チームリーダーの秦少発(Qin Shaofa)さんは述べた。

 ジーンバンクの基準では、完全な種子サンプルは最低2500粒で、1万粒程度が最もよいとされている。しかし、エベレストの高地では植物の種は非常に少なく、2500粒の最低条件を満たすことができないため、まずはできるだけ多くの種子を採取・保存するしかない。

 秦少発さんはチームを率い、計算・計量を行った須弥扇葉芥などの植物の種子をメインの乾燥室に入れた。温度15℃、湿度15%の環境下で1カ月間保存したところ、種子の水分量は5%程度まで低下した。

 低温で乾燥した状態では、須弥扇葉芥などの植物の貴重な種子は「休眠期」に入り、それを密封包装して低温倉庫で長期保存される。「マイナス20度の一定温度で、これらの種子は数十年、あるいは1千年以上生き続けると期待される」と、秦少発さんは述べた。

「ジーンバンクに保管されている種子が生きていることを確認するため、定期的に各種子のサンプルに対して活力テストが行われている」と、被子植物種子管理員の楊娟(Yang Juan)さんは語った。エベレスト植物の種子の採取時期から10か月後の2022年7月、最高標高の須弥扇葉芥の種子を含む5種の「エベレストの種子」が、初の発芽実験の日を迎えた。

 わずか9日間で、エベレスト野生植物5種の種子は、すべて順調に発芽した。

 エベレスト植物の種子だけでなく、ジーンバンクには何万もの貴重な遺伝資源が保管されている。運営開始以来、ジーンバンクには中国の野生植物の種子1万917種の8万7863セットが保存されており、中国の顕花植物の総数の36%がここに置かれている。

 一粒の種子は、生まれた瞬間から、生きる希望が宿っている。中国西南野生生物ジーンバンクが所蔵する種子は、生物多様性の保全にさらなる希望を与えることだろう。(c)People’s Daily/AFPBB News