【1月25日 AFP】中国南部の山間部では昨年12月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行したが、今はすでに沈静化したように見える。中国での最新の感染急増は、実は規制の大幅解除以前から起きていたという専門家たちの見解に沿うような現象だ。

 中国政府は12月初旬、感染拡大の封じ込めを目指してきた「ゼロコロナ」政策を撤廃。一般的には、この突然の政策転換が引き金となって感染者が急増し、病院や火葬場がパンク状態になったと考える向きが強い。

 だが、AFPが今月に訪れた雲南(Yunnan)省など南部の農村地帯では、予測よりも数週間早くピークを過ぎ、流行は収まりつつあった。

 少数民族・布朗(Blang)の集落が、茶畑と並んで斜面に点在する雲南省の景●(しんにょうに萬、Jingmai)山。医師のソン・キンファン氏は、12月20日頃が流行のピークだったと振り返り、「感染しなかった住民は基本的にいない」と言い、自らも感染しながら働き続けたと話した。

 1月初旬にAFPが訪れた東部山東(Shandong)省と安徽(Anhui)省でも、その数週間前の状態を語る村人たちの説明と比べるとそれぞれの保健所の様子は落ち着いていた。

 アジア太平洋臨床微生物・感染症学会(Asia Pacific Society of Clinical Microbiology and Infection)のポール・タンバイヤ会長は、地方の集落をすでに通過しているという事実は「現在の流行の波の先端」を示唆していると指摘。11月初旬にはすでに感染拡大が始まっていた証拠だと説明した。

 雲南省●(虫へんに馬)蟻堆(Mayidui)郷のある病院では、新型コロナ患者向けに特設された発熱クリニックの案内板があり、「陽性ゾーン」には真っ赤なプラカードが立っていた。だが、1月中旬のある日の午後、人影の少ないその施設に新型コロナの患者はいなかった。

 中医学の医師はAFPに対し、感染のピークは年明け直後で、毎日最大80人の新型コロナ患者を受け入れていたと語った。

 しかし、AFPが訪れた地域ではマスクを着用している人は見かけず、多くの人はウイルスを怖がっていなかった。

 景邁山の村のある商店の店主は、金属製のパイプで水たばこを吸いながら、新型コロナとインフルエンザは似たようなもので「冬には、どうせ風邪をひくだろう」と言った。

 また星火山(Xinghuoshan)村の道端で自家製の赤ワインを売っていた女性は「大勢が感染した」が、「それほど重くなかった」と言った。(c)AFP